研究課題/領域番号 |
25285057
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿古 智子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80388842)
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研究分担者 |
ヴィッカーズ エドワード 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (50631751)
于 小薇 中部大学, 国際関係学部, 講師 (40553095)
但見 亮 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (20367121)
小林 敦子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90195769)
王 雪萍 東京大学, 教養学部, 准教授 (10439234)
石塚 迅 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (00434233)
大澤 肇 中部大学, 国際関係学部, 講師 (00469636)
山崎 直也 国際教養大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10404857)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナショナリズム / 中国 / アイデンティティ / 市民社会 / 国際研究者交流 / 台湾 / 香港 / イギリス |
研究概要 |
科研1年目は3ヶ月に1度、メンバーで会合を開催し、それぞれの資料収集状況、調査報告などを行った他、ゲストスピーカーを招き、研究会を行った。7月には台湾師範大学の周祝瑛教授が台湾の学生や中国大陸に留学する台湾の学生のアイデンティティの形成に関して、11月には北京の環境問題のNGO、IPE(Institute of Public Environmental Affairs)の主任研究院の王晶晶氏が環境問題と市民社会に関して、2月には中国の人権派弁護士の浦志強氏が法曹界と市民社会のつながりや中国の民主化の行方について報告し、科研メンバー以外の参加者も交えて活発に討論した。 この他、台湾、香港、イギリス、中国大陸において各メンバーがそれぞれ調査を行う準備を行った。台湾では主に山崎が中心となって研究者や社会団体と交渉し、調査の協力を依頼した。石塚も台湾の法学関係者と連絡し、情報・意見交換を行うとともに、教養課程の法学に関する授業の観察を行った。香港及びイギリスには、Vickersが出向き、大学や社会団体と交渉を行った。イギリスでは、ロンドン大学が調査協力を行うことに前向きな姿勢を示している。中国大陸には阿古と澤田郁子(協力者)が訪問し、北京市や上海市の学校の授業観察を行ったり、専門家や団体を協議を進めた。その中で、東珍書院が全国各地の大学や社会団体、専門家と幅広いネットワークを築いており、また、本研究にも大きな関心を抱いていることから、共に事業を進めて行くことが可能であることがわかり、調査の内容について具体的な協議を始めた。 その結果、日本映画「それでもボクはやっていない」を用いたワークショップを行い、学生たちの法や人権、異文化を見る目を通して、アイデンティティ及びナショナリズムを分析することに決定した。そして、トライアルとして、中山大学及び武漢大学にて映画ワークショップを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国大陸で実地調査を行うためには、さまざまな働きかけを行う必要があることは当初からわかっていた。中学や高校の教室に実際に入り、我が方の研究の意図を理解してもらい、時間をとって、共に活動を企画してもらうには、相当な苦労が必要だと考えていた。その覚悟でまずは北京の学校で授業観察を行わせてもらったが、この学校に関しては、今後も我々の訪問を受け入れてくれそうである。また、映画ワークショップは2つの大学で実施することができ、台湾、香港、イギリスでも2年目に実施の方向で準備が進んでいる。この共同の部分以外にも、各研究者は情報収集や文献調査、実地調査を進めており、3ヶ月に1度の報告会で相互に確認し合っている。こうした状況から、ほぼ順調に進展していると言えると思う。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に行った2回のワークショップの分析を継続して行う。学生たちの討論の内容はすべて文字に起こし、録画したビデオで行動の特徴を把握し、ワークショップの最後に行ったアンケート調査の結果を集計していく。 中国大陸の映画ワークショップは、中山大学がメディア研究専攻の大学院生を対象に、武漢大学が法学部の学生を対象に実施した。本来は学部生なら学部生に統一して、各地域で映画ワークショップを行う予定であったが、受け入れてくれる学校を探すのが難しいこと、また、こうした質的手法によるアクション・リサーチは数多く行うのではなく、特徴のあるケースを選び、深く分析することが重要であることから、さまざまなタイプの学校で行うことを検討している。 現在、北京では、中等専門学校や高校で行う方向で交渉を進めている。農村部は香港理工大学の協力を得て、対象となる学校を選ぶ。台湾、香港、イギリスも順次、映画ワークショップを行う準備が整い次第、実施していく。また、中国の知識人や民間団体関係者、日本の市民教育や歴史教育に関する研究者を招待し、シンポジウムを行う計画も立てている。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に行った2つの映画ワークショップは文字記録、ビデオ録画資料、アンケート調査の集計などを現在行っているところであり、それが完了した時点で全ての経費の支払いを行う。この分の支出は2014年度に回すため、次年度使用額が生じている。また、台湾、香港、イギリスなどでのワークショップも2013年度はできなかったため、次年度以降に行う。2013年度は海外の研究者の招聘事業を、他の研究費と組み合わせて行うことができたため、一部経費を削減することができた。その分、この科研で必要とする資料収集や実地調査を充実させるよう工夫している。 2つのワークショップの経費を支払うとともに、台湾、香港、イギリスなどでのワークショプを実施していく。海外の研究者の招聘も行う。
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