研究課題/領域番号 |
25285062
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
浅子 和美 一橋大学, 経済研究所, 教授 (60134194)
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研究分担者 |
外木 好美 神奈川大学, 経済学部, 助教 (10621964)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 設備投資 / Multiple Q 理論 / Tobin の Q / 投資の調整費用 / 資本ストックの異質性 / 設備除却 / 財務データ / 景気循環 |
研究実績の概要 |
本研究は、企業の設備・在庫投資行動に焦点を当て、資金調達面を含めて理論的・実証的に考察し、マクロの景気変動へのインプリケーションを探り、日本と他の国(特に欧米や中国)との相違点を検証する目的を持ったものである。設備投資行動においては、資本 財別の投資行動(Multiple Q)および設備の正の投資(新規取得)と負の投資(売却・除却)といった2つの側面での異質性に注目し、「失われた20年」における投資行動の実態や生産性低迷の背景に関して、新たな知見と政策的含意を追及することとしている。そのために、平成25年度に3つの小プロジェクトをスタートさせ、平成26年度はそれらを継続・発展させ、さらなる進捗を見た。 まず第1に、日本政策投資銀行の個別企業の設備投資や財務データを用いた資本ストックの異質性に関するファクトファインディングにおいて、平成25年度に資本ストックの種類別のデータに因子分析を適用して、資本の異質性を検証したが,その成果が平成26年度に、英文専門雑誌(JKMEIT)に掲載された。関連したテーマについては,別の英文論文も作成し、平成27年1月にNew Zealandで開催されたWestern Economic Association の学会で報告した。第2に、内閣府の『民間企業投資・除却調査』を用いた分析は、個票入手後に企業財務データと突合し、第1のデータセットを用いた研究と同様に,Multiple Qによる投資関数の推計を試みる.第3に、財務省の『法人企業統計』データを用いた分析については、実際の作業には至らなかった。 以上の3つの小プロジェクトとは別に、研究代表者の浅子は、『家計・企業行動とマクロ経済変動:一般均衡モデル分析と実証分析』の刊行に向けての執筆活動を行った。この研究においては、グラナダで開かれた学会で報告し、ドイツのHagen大学等に1か月間ほど滞在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ミクロの企業の設備・在庫投資行動とマクロの景気変動に焦点を当て、資金調達面を含めて理論的・実証的に分析するものであり、とりあえず3つの小プロジェクトに分けてスタートした。設備投資に関する3つのデータセットを対象とすることから、3つの小プロジェクトに分けているが、分析目標は一貫している。平成26年度までの実績では、データの加工面等で最も困難なく利用可能な日本政策投資銀行のデータを用いた、資本ストックの異質性に関する検証作業が先行し、ほぼ予定通りの成果を上げることができたと考えている。2番目と3番目の小プロジェクトは、それぞれ内閣府の『民間企業投資・除却調査』と財務省の『法人企業統計』の個票データを用いるのであるが、これら政府統計の個票データの利用には特別の手続きが必要であり、平成26年度中には間に合わなかったものもある。しかし、プロジェクトの企画は十分踏み込んだものを用意しており、平成27年度以降の進捗には大いに期待できよう。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、2つの政府統計の個票を利用可能な段階に持っていき、その先はすでにアプローチ法を固めている設備投資関数の推計を行う。この際に、平成26年度に発表段階まで至った資本ストックの異質性についての実証結果(すなわち、実際に異質性を持っているとの結論)を前提として、Multiple Qの理論に従って、投資関数を推計する。その後は、マクロの景気変動における設備投資の役割の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画と比して差額が出た理由としては、人件費と謝金の支出が計画を大きく下回った点にある.それを相殺する形で②物品費と旅費が計画を上回った。データ整理等にアルバイト雇用を計画していたが、政府統計の利用可能性の手続きが遅れたことが大きい。
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次年度使用額の使用計画 |
政府統計データの整理・入力のための人件費・謝金、研究の進捗具合によっての学会報告等の旅費に支出する予定。
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