研究課題/領域番号 |
25285063
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大垣 昌夫 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90566879)
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研究分担者 |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60203874)
亀坂 安紀子 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70276666)
窪田 康平 山形大学, 教育文化学部, 講師 (20587844)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 行動経済学 / ミクロ経済学 / マクロ経済学 / 環境経済学 |
研究概要 |
これまでに得られている日本・米国・韓国・トルコ・ドイツのフィールド調査を用いて実証分析を進めた。日本・米国・韓国の無意識の世界観の親や子や他人に対する利他行動に関する実証分析を進めて結果を論文の初稿にまとめた。トルコとドイツとドイツでのトルコ人の移民の世界観の異世代間利他行動への影響の実証結果を論文の初稿にまとめた。日本と米国の世界観の異世代間利他行動への影響の実証結果をまとめて論文の改訂を行った。これら3本の論文を学会で発表し意見交換を行った。 これらの、実証結果をもとに理論モデルに発見された洞察の導入していき、政策分析を進めて2本の論文の初稿にまとめた。1本の論文では経済学で使われている厚生主義(功利主義やパレート主義)に加えて徳倫理の評価を規範経済学に導入するための新しい理論的フレームワークを提唱し、その応用例を提示した。応用例では子供の効用に関して親の子供時代の甘やかしの行動によって内生的に子供の忍耐強さが変化するタフ・ラブ・モデルを用いた。このモデルでは政府が次世代の忍耐強さに影響を及ぼす意図がなくとも、社会的厚生関数を最大化すると正の遺産相続税率となり、次世代の忍耐強さに影響を及ぼしてしまっている。ここで、政府がこの影響を少しでも考慮すると、むしろ自由放任の遺産相続税率を選ぶことになる。もう1本の論文では働くことのできない障害を持った他人に対して利他的であるべきと思いながら、利己的になる誘惑を受けている主体に対して所得税が持つ効果を分析した。それぞれの論文を学会で発表し意見交換を行った。 マレーシア人のキリスト教牧師やマレーシア人のビジネスのリーダーたちと連絡をとり、マレーシアでの調査の準備と、比較のための香港でのマレーシア人を対象とした調査の準備を進めた。タフ・ラブ・モデルを実験で検証するために親子ペアを対象とした実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のデータの実証分析について、おおむね順調に進展している。fMRIを用いた実験データに関して、実験参加者の世界観が利他行動に影響している統計的に有意な実証結果が得られ、fMRIデータを分析する前の段階の経済行動に関する結果が得られたことは大きな進展である。しかし、これらの結果の分析と頑健性の確認に予想以上に時間が必要であったため。fMRIデータの分析は予定していた平成25年度中には開始することができなかった。 理論モデルの検証のた収集に関しては、本研究プロジェクトで重要な役割を果たすタフ・ラブ・モデルに関する実験を親子ペアを対象に行うことができたのは大きな進展である。しかし、香港で計画しているマレーシア人を対象にしたアンケート調査は準備を進めたが平成25年度には実施できなかった。 実証分析に基づいた理論モデルの構築・改善と新しい政策評価の理論的フレームワークの構築は予定通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに収集した実証データの分析と、分析結果を参考にした理論モデルと政策評価の新しい理論フレームワークの研究を進めていく。 アンケート調査と実験により新しくデータを収集し利他行動と環境保護行動の研究を進める。このため、マレーシアでは仏教徒とキリスト教徒、また、先住民と華僑の世界観の違いに注目してフィールド調査を行う。また、香港に住んでいるマレーシア人にアンケート調査を行い、移住者が持つ傾向のある世界観や、世界観の変化について研究する予定である。 計画ではフランスではキリスト教徒とイスラム教徒、また、特に在仏トルコ移民の世界観の変化に注目してフィールド調査を行う予定であったが、香港とマレーシアでの調査の準備がすでに進んでいる。ヨーロッパについてはドイツとトルコとドイツへのトルコ移民について本プロジェクトで研究がすでに進んでいることもあり、香港とマレーシアでの研究を優先する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
香港で計画していたマレーシア人を対象にしたアンケート調査は準備を進めたが、予測したより協力をお願いする団体との交渉に時間がかかり、平成25年度には実施できなかった。このため香港で予定していたアンケート実施のための研究費用は平成25年度には使用しなかった。 次年度使用額と平成26年度分として請求した研究費を合わせて香港でマレーシア人を対象にしてアンケート調査を平成26年度に行う計画である。
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