研究課題/領域番号 |
25285067
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
黒住 英司 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00332643)
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研究分担者 |
早川 和彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (00508161)
奥井 亮 京都大学, 経済研究所, 准教授 (20563480)
山本 庸平 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (80633916)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済統計学 / パネルデータ / 計量経済学 / 構造変化 |
研究実績の概要 |
1.因子モデルの構造変化を考慮した将来予測法を開発し,その理論的正当性を証明するとともに米国マクロ経済データに応用した. 2.平成25年度開発したパネル共分検定について,局所対立仮説下での漸近論を導出し,ラグ次数と検出力の理論的な関係を明らかにした.また,このパネル共和分検定については,構造変化が起きていたとしても変化点が既知であれば,現状のままで有効であることを明らかにした.なお,この検定はクロスセクションの時限Nが有限で時系列の次元Tを無限大にとばす極限を考えているが,NとTを同時に無限大にとばす同時極限を考える場合は,クロスセクション間の独立性を想定すれば可能であることを明らかにした. 3.無限次元自己回帰モデルのパネルデータを用いた推定法の開発を完成させた.また,パネル・データを用いた個人間で異質な動学構造を推定する方法の開発をすすめた. 4.相互作用効果を持つパネルデータモデルにおけるGMM推定量の識別問題を詳しく分析した.また,モーメント条件が多い場合でもサイズの歪みが小さくなる新しい過剰識別制約検定を提案した. 5.構造変化のあるモデルにおいて変化点を推定した場合の信頼区間の新たな構築方法を開発した.この手法は検定統計量を逐一反転させるものであるので,計算時間はある程度かかるものの,既存の手法と比較して,Coverage Rateが正確であり,かつ,平均的な信頼区間の長さが短いことが分かった.また,この手法の日本経済への応用をすすめ,フィリップス曲線の分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の実施計画と照らし合わせた進捗は,以下の通りである. 1.各研究分担者は実直に研究に取り組み,その成果を広く発表している.2.同学的因子モデルの予測法の開発と実証分析の進捗はほぼ予定通りである.3.パネル共和分検定については局所対立仮説の下での理論を確立したことは,大きな理論的な進展である.また,構造変化の存在については既存の手法で対応できることを明らかにした.4.パネル・モデルの構造変化の回数の推定については,既存の情報量規準が有用であることをシミュレーション実験で確認できた.5.無限時限自己回帰モデルの推定手法,および,自己共分散の横断面での分布の推定について開発が進められ,特に前者の開発はほぼ完成した.6.GMM推定量の識別問題の分析は大きく前進した.ただし,構造変化を許容するモデルへとは発展させていない.7.固定効果モデルモデルにおける時系列方向のパラメータの安定性の検定については,クロスセクションの時限Nと時系列の次元Tを同時に大きくすることを検討し,因子分析の手法などでクロスセクション間の従属性を取り除けば可能であることを明らかにした.8.各研究分担者が連絡を取り,国内外の研究集会へ同時に参加をしてお互いの研究の進捗状況について意見交換を行った. 以上のことから,総じて,本研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に推移しているため,今後の研究推進方策は,これまでの方策から大きく変更する予定は無い.ただし,細かい個別テーマについてはある程度の修正と追加はある.「11.現在までの達成度」で述べたように,構造変化を考慮したパネル共和分検定は既存の手法で対応できること,パネル・モデルの構造変化の回数の推定は既存の情報量規準で対応できることが明らかとなったため,これ以上の理論的な発展は模索しないことにする.その他の方針については,これまで通りである.一方,平成26年度中に研究成果を学会で発表した際,(パネル・データの)構造変化の検定に関しては既存のデータセットに対する検定であったが,データが更新されるごとに構造変化を検証していくモニタリング・テストも実証分析の観点から重要である,という指摘をもらった.この点については指摘通りであるので,平成27年度については,新たにモニタリング・テストの開発もすすめていくことにする.また,極値論のパネル・データへの応用も既存研究ではすすめられていないことが分かったため,平成27年度はその可能性も模索する予定である. また,平成26年度と同様,お互いの意見交換のため,International Association for Applied Econometrics Conference(ギリシャ,6月),統計関連学会連合大会(岡山大学,9月),関西計量経済学研究会(神戸大学・1月)などの国内・外における学会・研究会に複数の共同研究者が同時に参加し,お互いの研究の進捗状況を直接,連絡し合って研究成果を進展させると共に,研究の総括を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
航空運賃は日々変動しているため,旅費の支出額が変わったことと,英文校閲を依頼する予定だった論文の完成が年度をまたぐ事になるため,校閲依頼を平成27年度に繰り越したため.また,平成26年度に招へいする予定であった海外の研究者について,散発的に招へいするよりも国際研究集会で同時に招へいする方がより効果的であると判断し,招へいを平成26年度から平成27年度に変更したため.
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額の一部は,海外研究者の招へいに充て,平成27年5月30日,31日に一橋大学国立西キャンパスで開催される"The 11th International Symposium on Econometric Theory and Applications (SETA2015)にて研究発表を依頼する.また,その他の繰越額は,平成27年度に完成予定の論文の英文校閲日に充てる.
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