研究課題/領域番号 |
25285070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 孝明 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (30262091)
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研究分担者 |
中川 万理子 東京大学, 空間情報科学研究センター, 講師 (30779335)
田渕 隆俊 東京大学, 経済学研究科, 教授 (70133014)
金本 良嗣 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (00134198)
藤嶋 翔太 東京理科大学, 経営学部, 講師 (50706835)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 都市経済学 / 空間経済学 / 都市・地域政策 / 経済地理学 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、都市の空間構造や都市システムの変化を分析する枠組みを構築した。内容が多岐にわたるため、代表的なもののみ記述する。 まず、都市内の輸送手段と都市構造の関係について、さらに分析を進めた。輸送手段と空間構造に相互依存関係が存在し、輸送手段が空間構造に影響を与えるだけでなく、輸送手段自体が空間構造によって決定されるという点に注目した。昨年度までに大まかな理論モデルを組み上げたが、本年度はそれをさらに精緻化し、現実の数値を入れたシミュレーション分析も行った。その結果、大量輸送機関が導入されて都市が高密度になる場合と、導入されずに自動車交通に依存し低密度になる場合の、二通りの可能性があることを複数均衡の形で示した。 さらに、高齢化の進展に伴い、空間構造がどのように変化するか、分析を開始した。分析にあたっては二つのアプローチをとった。一つは、完全競争の下で各都市の大きさが決まると考えるアプローチである。高齢者と非高齢者では、都市生活の費用(urban cost)の大きさに差異があることに着目して、高齢化が都市システムにどのような影響を与えるか、分析を進めた。もう一つは、不完全競争の下で経済活動の空間的分布パターンが決まると考えるアプローチである。新経済地理学のモデルを利用して、高齢者と非高齢者の立地のインセンティブの違いに注目し、分析を行った。 加えて、都市構造に大きな影響を及ぼす通勤費用のあり方について検討を加えた。従来、通勤費用は距離に対して線形であると仮定されることが多かったが、非線形の通勤費用を考えると通勤パターンが大きく変わることを明らかにした。 また、社会的ネットワークが重要な役割を果たすときに、都市システムの構造がどのように決まるか、理論的に明らかにした。規模縮小時代には社会的ネットワークの役割も変わっていくので、このテーマは重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、評価の高い国際学術誌に6本の査読付き論文を掲載する一方、国際学会において4件、国内学会において2件の研究発表を行った。このペースは、経済学、とくに都市・地域経済学の標準を大きく上回っている。このことから、当初予定していたよりも研究が順調に進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、とくに高齢化の進展に伴い空間構造がどのように変化するかについて、研究をさらに進める。すでに分析を開始した完全競争アプローチと不完全競争(新経済地理学)アプローチの二つのアプローチに基づき、理論モデルの構築を行う。それ以外にも、空き家の増加や中心市街地の衰退といった、規模縮小時代に特有の問題の分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、内外の関連分野研究者をよび研究発表を行ってもらう予定だが、予定していた回数より少ない回数しか実施できなかった。また、次年度は最終年度にあたり、研究発表のための学会参加等に本年度を大きく上回る額の支出が予定される。そのことを斟酌して、本年度の支出を抑えた。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り、内外の研究者をよび研究発表を行ってもらったり、専門的知識を提供してもらう予定である。その回数を増やしたり、規模を大きくして開催することを考えている。それに充当する。また、次年度は、本年度以上に積極的に学会に参加する予定である。
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