研究課題/領域番号 |
25285072
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30173305)
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研究分担者 |
斎藤 修 一橋大学, 名誉教授 (40051867)
北村 行伸 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70313442)
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済発展論 / 全要素生産性 / 経済収束 / 地域間所得格差 / 少子高齢化 |
研究実績の概要 |
江戸時代以降の地域間経済格差と産業構造に関するデータベースを作成し、一橋大学の長期経済統計がこれまでカバーしていなかった1985年以前のうち、1874年の全国、都道府県別GDPの推計を行うなど、新しい成果を得た。また新推計を使って地域間経済格差、産業構造、人口高齢化、所得分配、および貧困に関する研究を進めた。 これらの成果は、丸善出版よりRegional Inequality and Industrial Structure in Japan: 1874-2008として出版したほか、Asian Historical Economics Conference総会(2014年9月イスタンブール)で報告するなど積極的に外部に発信した。 また、企業ミクロデータを用いた生産性に関する実証研究についても、研究を進めた。具体的には、日本の長期経済停滞の原因を探る研究(Lessons from Decades Lost: Economic Challenges and Opportunities Facing Japan and the United States," PIIE Briefings PIIEB14-4, PIIE)、産業集積が工場の生産性に与える影響(How important is geographical agglomeration to factory efficiency in Japan’s manufacturing sector?" The Annals of Regional Science)についてDPを発表した他、工場間の近接性と技術知識ストックのスピルオーバーに関する研究を継続した。成果は、海外から40人以上が参加したWorld KLEMSコンファレンス(2014年5月 東京、RIETI・ハーバード大学等と共催)で、キーノート・スピーチとして講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2014年度に設定していた計画を十分に達成した。具体的にはまず、以下のデータベースを完成させた。 1)江戸時代:地域別の人口・都市化率・産業構造(Saito and Takashima 2014によるMalanima 2011の手法の改訂)、2)1874-2008:都道府県別の人口・産業別就業者数・産業別労働生産性・産業構造、3)1955-2008:都道府県別マクロレベルの資本投入・労働の質・全要素生産性(TFP)、4)1970-2008:都道府県別23産業別の資本・労働の質・TFP これにより、江戸時代以降について人口1人当たりGDPおよび地域別GDPの推計が可能となった。その結果、例えば以下の通り、明治期前半と後半で日本の工業化の過程が著しく異なっているとの新しい知見を得た。 明治期前半(1874-1890):副業を考慮しても製造業の就業者シェアは大幅に増えたが労働生産性はあまり上昇せず。就業者の増加はもともと製造業の就業者が少なかった県で特に著しかった。一方、高付加価値型産業が一部の先進地域に集中すること等により、製造業労働生産性の地域間格差が著しく上昇した。このことが人口1人当たりGDPの地域間格差拡大の主因となった。 明治期後半(1890-1909):製造業の就業者シェアはほとんど増えず、労働生産性上昇が加速した。労働生産性上昇は、先進県だけでなく、後進県でも生じた(資本投入増加や技術伝播が全国規模で起きた可能性が指摘出来る)。付加価値で見た製造業内の地域特化は減速したが、就業者に占める製造業のシェアの地域間格差は拡大した。
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今後の研究の推進方策 |
完成したデータを活用して、実証研究を進め、その成果を国際会議等で発表すると同時に、英文雑誌等への投稿を目指す。具体的には、日本の超長期GDP推計に関する論文、地域間格差と貧困に関する業績1)の改訂版、19世紀末以降の英国と日本の成長会計の比較論文、地域間経済格差と産業構造に関する論文、の4本を2015年8月に京都で開催されるWorld Economic History Congressで報告する予定である。また、岩波書店から2017-18年度に出版予定の岩波講座『日本経済の歴史』にも成果を反映させる。なお、完成した日本の地域別GDP、産業構造等に関するデータを2015年度中に、一橋大学経済研究所や経済産業研究所の英文ウェブページで世界に公表する。 工場、企業のミクロデータを使った実証研究についても更に推進し、その成果をJapanese Economic Review の特集号に掲載することを目指すなど、英文雑誌等での刊行に努める。更に、日本の長期経済停滞に関する研究成果は、World KLEMSの成果を集めた本(ケンブリッジ大学出版会から出版予定)に掲載する予定である。これに加えて、単著の英文書の出版も目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた作業を効率的にこなした結果、人件費の削減につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の人件費・謝金に組み込み、本研究最終年度の事業を纏める作業(各種データの保管、ウエブ掲載等)に使用する。
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