本研究「電力消費デマンド・レスポンスの経済効果の実証研究」では、ランダマイズド・エクスペリメント手法を用いて、電力消費に関する個票データに基づいて、ピークカット・ピークシフトのトリートメント効果評価を行い、それら経済効果の日米国際比較を通じて、日本のスマートグリッドの経済効果の測定を行います。特に、同じような研究課題に取組む米国研究チームとの研究交流を密にし、国際共同研究の推進に注力します。そして、本実証研究の結果をもとに、電力産業の規制改革への含意を議論します。 第3年度に当たる2015(H27)年度では、分析結果の評価に基づく政策的議論を行いました。重要な経済効果で統計的に有意な推定結果が得られれば、個人属性・住宅要因・環境要因を内挿して、政策効果を柔軟にシミュレーションできます。家族構成が単身と5人家族の場合の比較・夏の最高気温が30度と35度の場合の比較などを織り込んで、シミュレーション結果がどう変わるかを見れば分かります。当然、経済効果はシナリオによって異なってきます。 さらに、社会全体で達成したい数値目標が別途存在する場合には、多様なシナリオ別に、誰がどれだけ削減すれば、社会的目標を達成できるのかを割り当て、目標達成のためのインセンティブ・メカニズムを考えます。家庭のデマンド・レスポンス・データを地域の電力需給データとも連結させて、社会的な費用便益分析を行うことも可能です。 日本で現在展開中のスマートグリッド社会実験の推進を考える上で、再生エネルギー(バイオマス・太陽熱利用・雪氷熱利用・地熱発電・風力発電・太陽光発電など)・次世代自動車は必須のコンポーネントです。そこで、消費者アンケート調査も行い、世帯の家族構成、生活スタイルの差異に注目しながら、新エネルギーの受容度・支払意思額、EV/PHVへの消費者選好を定量的に把握しました。
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