研究課題/領域番号 |
25285075
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 顕三 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00175902)
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研究分担者 |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際経済学 |
研究概要 |
平成25年度は、国際輸送産業に関連して発生する経済便益と環境負荷に焦点を当て、その計測のためにバングラデシュ、チッタゴン市においてフィールド実験を行った。具体的には、船舶解体ヤードが点在する近隣のコミュニティーにおいて、実験による住民の選好の抽出、環境に対する支払意思額の調査を実施した。選好としては、リスク選好、時間選好、利他性など広くフィールド実験一般に行われており他の研究とも比較可能なものを選択した。また、公共財ゲームも行った。その他、個人属性、コミュニティー属性などについてはアンケート調査によって捕捉した。さらに、現地大学の大学院生の協力を得て、ゲームの結果、およびアンケート調査の結果の翻訳・データベース化を完了させている。現在、例えば環境への支払意思額に影響を与えている選好や属性などを抽出することを目的として、データの分析を行っている。 また、国際輸送から汚染が発生するような貿易モデルを構築し、貿易自由化や環境政策が資源配分や経済厚生に対してどのような影響を与えるかを理論的に分析した。その分析では、対称的な2国モデルにおいて、各国に最終財を供給する企業と国際輸送サービスを供給する企業が存在し、それぞれの市場で寡占競争を行っている状況を想定した。汚染による損失が大きい場合、環境政策が行われていない状況での貿易の自由化は両国の経済厚生を引き下げる可能性があること、また、貿易の自由化が行われている場合に協調的な環境政策の導入が両国の経済厚生を引き上げることなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた経済実験によるデータの収集については、予定通りに進んでいる。ただし、バングラデシュの政治状況(選挙)の影響などもあり、この準備や実施に予定よりも時間がかかってしまったため、理論分析について予定よりも少し遅れている。また、国際輸送を含む貿易モデルにおける理論析については一定の成果が得られており、順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に行った経済実験の結果については、データ分析が終了次第論文の形にまとめ、コンファレンスでの報告、およびジャーナルへの投稿をする。また、その理論分析については、既存研究を発展させる理論モデルを構築し、少なくとも1~2本の論文を投稿、もしくは出版する予定である。 国際輸送を含む貿易モデルにおける理論分析においては、さらに平成25年度に構築したモデルを一般化および精緻化し、そのもとでの貿易政策や環境政策の効果を分析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、国際輸送企業の行動および国際輸送市場に関する研究を行うため、実態調査、理論分析、および経済実験を行うこととしていた。このうち実態調査に関して、データベース資料を購入したものの、国内外の企業へのヒヤリングが実施できず、旅費・謝金等への支出が予定を下回った。また、調査ができなかったために、その後に予定されていた資料整理に対する補助への支出が予定を下回ることとなった。 平成26年度も引き続き、国際輸送企業の行動および国際輸送市場に関する研究を行うため、実態調査、理論分析、および経済実験を行う予定である。実態調査のため、国内外の企業の資料収集やヤリングなどを行う予定であるが、本年度予定されていた実施計画を拡大し、そのための旅費・謝金等への支出として使用する。また、学会やコンファレンスへの参加なども増やし、そのための国内旅費・海外旅費として使用する予定である。
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