研究課題/領域番号 |
25285094
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上田 貴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00264581)
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研究分担者 |
高橋 アナマリア 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (00634635)
三好 向洋 愛知学院大学, 経済学部, 講師 (10636244)
安部 由起子 北海道大学, その他の研究科, 教授 (50264742)
臼井 恵美子 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (50467263)
高橋 新吾 国際大学, その他の研究科, 准教授 (70445899)
小原 美紀 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (80304046)
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
吉田 恵子 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (90441104)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 財政・公共経済 / 労働経済 |
研究実績の概要 |
日本の大学教員の現状を公的統計により総括的に把握する目的で、文部科学省「学校基本調査」及び「学校教員統計調査」の高等教育機関における個票データ申請を行い、12月から個票データによる基礎的な分析を開始した。「学校基本調査」による分析からは以下が示された。①女性教員比率と学部入学の女子学生比率に正の相関関係があるが、大学院では相関関係は認められない。②女性教員比率と女子大学院生の研究職就職との間の関連は認められない。「学校教員統計調査」による分析からは以下が示された。③年齢・職階・大学院教育等が同じでも女性教員の俸給は男性教員よりも低い。④同様に年齢・大学院教育等が同じでも、女性教員の職階は男性教員の職階よりも低く、社会科学・経済学関係分野では理科系よりも女性は男性より昇進が遅い。⑤年齢・大学院教育等が同じ時、H15年度では女性は大学教員採用において有利ではないが、H18年度、H21年度では女性の方が積極的に採用されるようになっている。⑥大学学部において女性教員比率が高いと女性教員が採用される確率が高まる。⑦非常勤職のみの講師は常勤教員に比べ、年齢や大学属性・研究分野をコントロールしても女性が多く、特に人文・教育・芸術等の女性教員の多い分野で顕著であるが経済学分野では女性割合が小さい。 また、海外研究者との連携を深め海外における学術現場の現状と支援状況を探った。具体的には、2014年5月にコロラド大学経済学部准教授Terra G. McKinnish氏を招聘、12月に米国インディアナ大学経済学部教授Yoosoon Chang 氏招聘、また2015年1月に研究代表者が米国経済学会女性支援委員会(CSWEP)メンタリング・セッション(CeMENT)を視察を行い海外連携と知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文部科学省「学校基本調査」及び「学校教員統計調査」の高等教育機関における個票データの使用許可を受けて、大学教員の現状を経済学分野も含めて研究分野による相違を比較しながら総括的に分析を進めることができた。データを分析に使用するためのデータ整理準備に時間がかかる可能性が懸念されたが、申請準備段階でデータ項目や分析手法を吟味済みであったこと、個票データがすぐに分析できる形式で提供されたために、データ提供後にすぐに分析にかかることが可能であり、研究実績概要に支援したような興味深い分析結果を速やかに得ることができた。具体的には、俸給、昇進面で女性は男性に及んでいないことが明らかになったが、積極的に女性が採用されるように急速な変化が見られることも示された。分野別の分析からは経済学分野では女性の進出が時に理系よりも遅れていることが示されている。女性教員の存在と女性教員採用や学部女性学生との関連も示され女性教員のロールモデルの役割も示唆されている。このように今後の論文執筆に向けて順調な研究成果を得ることができている。さらに、本分析結果を元に公的データからなお不足する情報の補充を検討することが可能となっており、懸案であったアンケート調査項目の調整を具体的に進める目途がたっている。また、海外連携についても、Yoosoon Chang 氏の協力により米国以外のアジアとの連携を具体的に進めることができており、グローバル化する学術研究の現場で必要な支援に関する知見を深めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本課題最終年度となる。前年度から分析中の文部科学省「学校基本調査」及び「学校教員統計調査」個票データ分析を進め、基本的な結果を論文にまとめて研究報告を行い、フィードバックを得ながら分析の精査を進める。本分析は、各調査ごとにサブグループを組み、共通の分析ソフトウェアとしてSTATAを用いながらそれぞれのグループにおいて分析を進めており、これを継続実施する。本分析結果に対する助言を得るため、現在、本研究分野における第一人者であり海外研究協力者である米国・カンザス大学Donna Ginther教授を日本に招聘する方向で日程を調整中である。また、研究分担者である高橋新吾・高橋アナマリア氏が、日本の研究者に関する分析結果を海外学会で報告するよう応募中である。 また、若手・女性経済学研究者がどのような支援を必要としているか知見を得るため、海外研究者との連携活動を継続して実施する。まず、5月に一橋大学で開催される第11回International Symposium on Econometric Theory and Applications (SETA) Meetingに来日予定の米国インディアナ大学Yoosoon Chang教授の協力を得て、女性研究者支援セッションを開催する予定である。さらに6月に中国・北京の人民大学でカナダ等からも研究者を招聘して開催される若手女性支援セッションに参加者を派遣する方向で予定調整中である。 以上のような日本のデータ分析結果や海外研究者との交流を元に、日本の若手・女性経済学研究者の抱える課題や支援に関して、調査の必要性が高いと考えられる側面について検討を行い、年度前半でWebによるアンケート調査とインタビュー調査の詳細を詰め、年内にこれらの調査を実施、年度内に結果の分析を終える計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ分析に関して、本プロジェクト開始時点の計画では、公的統計データによる分析と独自のアンケート調査設計を並行して行う見込みであった。しかしながら、研究遂行方法の検討・討議を進めた結果、公的統計の精査を優先し、公的統計からの不明点に関して追加的に独自のアンケート調査とする方向性となった。前年度は公的統計データ使用申請と分析並びに海外連携に注力しアンケート調査実施を3年目に持ち越しているため、また他機関からの追加的経費を得て主として国内旅費にあてることができたため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次の3点に使用する計画である。(1)公的統計データ分析に関連して、統計ソフトウェア・書籍・PC関連品を含む消耗品の購入、補助データの調査・入力等のための大学院生リサーチ・アシスタント等の雇用謝金に使用する。(2)Webによるアンケート調査、及びインタビュー調査の準備・実施に係る経費に使用する。(3)研究成果の議論・報告のための国内外旅費に使用する。
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