研究課題/領域番号 |
25285095
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
阿部 彩 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 部長 (60415817)
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研究分担者 |
竹沢 純子 国立社会保障・人口問題研究所, 企画部, 研究員 (00535479)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 貧困 / 社会政策 / 社会保障 |
研究概要 |
本年度の研究実績として主に3つの成果が挙げられる。 一つ目は、「貧困研究の体系化」の一環として行った貧困の定義と測定に関するデータベースの構築である。本データベースは、ホームページに掲載され一般市民に広く公開されている。また、子ども期の貧困による子どものウェル・ビーイングへの影響、子ども期の貧困が成人期の困難につながる「経路」の分析、子どもの貧困に関する政策効果の検証などの文献サーベイを行った。これらの成果の一部は一般書籍としてまとめられた。 二つ目の成果は、ユニセフ(国連児童基金)のイノチェンティ研究所との共同研究を「先進国における子どもの幸福度-日本と比較特別編集版」を日本語と英語で刊行したことである(2013年12月)。本分析は、日本の子どもの現状を「物質的豊かさ」「健康と安全」「教育」「日常生活のリスク」「住居と環境」の5分野の指標で表したものである。結果として、日本は「教育」「日常生活のリスク」では31カ国中1位であったものの、「物質的豊かさ」では21位であることがわかった。本報告書は多くのメディアから取り上げられることとなった。 三つ目の成果は、貧困の一側面でありながらこれまで貧困研究にてあまり取り上げられることがなかった「住宅」に着目し、住宅面からの日本の貧困基準は何かという課題を分析した。本研究の成果は、社会政策学会誌『社会政策』にて小特集として発表されることとなっている(2014年6月刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画においては、特に、「貧困の体系化」と「貧困の国際比較」を行うこととなっており、この両者において研究は順調の進展している。「貧困の体系化」については、「貧困の定義と測定」についての文献サーベイはほぼ終了しており、ホームページに掲載されている。本ホームページについては、今後、普及活動を続けていく予定である。 「貧困の国際比較」については、ユニセフ・イノチェンティ研究所との共同研究の一つ目の報告書を2013年12月に刊行した。本報告書では、「物質的豊かさ」「健康と安全」「教育」「日常生活のリスク」「住居と環境」の5分野における先進諸国31カ国の子どもの状況を比較しており、日本は「教育」と「日常生活」で1位であったものの、「物質的豊かさ」では21位という低ランクであった。現在、二つ目の報告書(レポートカード12)の分析のために、厚生労働省「国民生活基礎調査」の二次利用の申請を行い、そのデータの分析を進めているところである。 最後に、「最低限の住宅」に関する分析については、当初の計画にはなかったものの、追加の研究成果としてあげることができる。本研究では、「最低限の住居は何か」という問いを一般市民へのグループ・インタビュー、アンケート調査などから明らかにし、それと国交省規定による「最低居住基準」を比較した。ここから、金銭的な貧困基準のみならず、物質的な貧困基準を考える際の重要な示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、まず「貧困の体系化」において、「貧困とさまざまなアウトカム(健康、学力、社会資本など)との関連にかかわる研究」について文献サーベイを進める予定である。既にヒアリングの予定が確定しているものは、社会疫学、小児医療、教育学であり、当該分野のこれまでの知見を収集するためにこの分野における有識者のヒアリングを行う。 国際比較については、引き続き、ユニセフとの共同研究を進め、年度内において「レポート・カート12」報告書の刊行を目指す。レポートカード12は、主に、2000年代後半の経済危機前後の子どものウェル・ビーイングの変化に着目するものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定であった「貧困基準」に関する一般市民の意識調査は、調査の設計および時期的な観点から、より大規模かつタイムリーなものにするため、平成26年度の予算と合わせて平成26年度に行うこととした。また、引き続き、論文サーベイの結果をホームページに掲載するための経費および人件費を使用する。 平成26年度においては、以下の項目にて予算を使用する。 1)オーストラリアの貧困研究者を招聘して「高齢者の生活水準:日豪比較」のワークショップを開催(旅費は先方もち。日当および謝礼のみ)、2)国際社会保障研究連盟(FISS)の会議(スウェーデン、6月)に出席し、ユニセフを始めとする海外の貧困研究者と打ち合わせを行う(旅費+日当)、3)ユニセフのレポートカード12(先進諸国の子どもの幸福度報告書)を作成し、和訳を行う、4)一般市民を対象とする貧困意識調査の実施
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