研究課題/領域番号 |
25285097
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
林 文夫 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (80159095)
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研究分担者 |
大橋 和彦 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (50261780)
本多 俊毅 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (70303063)
沖本 竜義 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (70420304)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 資産市場の連関 / ボラティリティー / 金融政策 / 量的緩和 |
研究概要 |
林は,金融政策における量的緩和の効果について、東京大学講師の小枝淳子氏と共同で研究を行った。量的緩和の拡大は、GDPギャップの改善をもたらすこと、しかしながら量的緩和政策の停止は、準備預金が十分下がった状況で行えば,物価およびGDPギャップを改善することを示した。構造VARと呼ばれる手法に、レジーム変化を導入することにより、これらの結果が示された。サンフランシスコ連銀のコンファレンスなどで、研究結果を発表した。 大橋は、個別商品間相関の構造変化の分析のため沖本と共に進めてきた、ST-DCC(Smooth Transition Dynamic Conditional Correlation)モデルを用いた商品先物の収益率のExcess Comovementの変化に関する論文を、RIETIのディスカッション・ペーパーとして公表した。また,商品の収益率,相関,ボラティリティに対するマクロ変数や流動性の影響の分析に向けて、特に流動性が資産価格に与える影響に関する文献調査を進めた。さらに,これらの分析手法の他資産への応用の準備として、J-REITと日本株式の収益率等に関するVAR分析を行い、両資産の収益率のボラティリティ間に強い時系列関係を見出した。 本多は、資産収益率のパラメータが未知である場合の資産選択行動について、理論的な分析を行った。特に、未知パラメータの存在を、意思決定問題における曖昧さ(ambiguity)としてとらえ、最近の意志決定理論の成果を応用し、最適解の特徴を分析した。具体的には、資産運用理論における古典的なsingle mutual fund 定理は一般には成立せず、最適解は複数のmutual fundの組み合わせとして表現され、その組み入れ比率が「曖昧さ」に対する許容度に依存して定まることを理論的に示した。得られた結果を論文にまとめ、Asian Meeting of the Econometric Societyなど複数の研究集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖本が、平成25年度の最終月に海外の大学に移籍し、研究分担者を離れたにもかかわらず、交付申請書に記載した、個別商品先物間の連動に関する大橋との共同研究は順調に進んでいる。時間があれば行うとした林と沖本の共同研究は進展しなかったが、その理由は、林の金融政策の分析が、予想以上に進展したためと、海外のある研究者が、林と沖本が予定していたのとほぼ同じ内容の研究を平成25年度に発表するという、予測の事態が起こったためである。本多は,モデルの不確実性が資産選択に及ぼす影響の文献調査を計画していたが,それはは予定通り進展した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降の研究は、当初の予定通り行う。すなわち,林は,金融政策に関する研究を論文としてまとめ,査読雑誌に投稿する。大橋は,平成25年度に沖本と行った,商品先物間の連動に関する研究を,マクロ変数に関連づけることを試みる。本多は,平成25年度に行った文献調査に基づき,資産選択と資産間の連動の関連についてどのようなモデルが適当かを検討する。一つの例外は、林と沖本の、商品先物と株の連関に関する研究は,平成25年度に発表された海外の研究の進展によっては断念することもありうる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年に提出した「研究計画調書」では,研究期間(平成25年度から3年間)の各年度で,研究分担者が海外出張を1回ずつ行うという前提で予算を組み,旅費を申請した。しかし実際に交付された予算は申請額をかなり下回った。そこで,研究分担者が毎年海外出張することは断念することとした。初年度である平成25年度は,アシスタントの雇用を断念することで3人ないし4人が海外出張をできるよう支出計画を立てたが,結果的には海外出張は2人が各1回にとどまった。その結果,基金部分300万円のうちかなりの部分を平成26年度に繰り越すことができた。 次年度である平成26年度は,基金部分の直接経費は100万円だが,その金額以上を,研究分担者の海外出張と,今年から研究協力者となった沖本の旅費で支出する計画であり,不足分は「次年度使用額」から支出する。
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