研究課題/領域番号 |
25285107
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
若林 幸男 明治大学, 商学部, 教授 (60328961)
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研究分担者 |
秋谷 紀男 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00202549)
木山 実 関西学院大学, 商学部, 教授 (30340897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 総合商社 / 人材陶冶 / ホワイトカラー / 三井物産 / 学歴 / 昇進と昇給 / 異動と昇進の相関 / 人事査定 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、研究実施計画に基づき、①NARAへの調査実施、②NAAへの調査実施、③収集史料のデジタル化、集計処理、④処理終了後のデータを用いた研究の公開(学会報告)、⑤収集データ処理に基づいた学術論文(研究ノート)の作成を行った。 ①については昨年8月の1週間、②については本年3月の5日間の実施により、約1万点の原史料の収集に成功した。③については適宜アルバイトによるハードコピー、解読、デジタル化の作業と研究代表者、共同研究者各位による入力が続いている。④の研究公開については、第83回社会経済史学会全国大会(5月24、25日同志社大学)において研究代表者により「戦間期三井物産職員の定期昇給とボーナス決定のメカニズム」(自由論題)として展開した。この際使用したデータは、2013年度の本科研費によるNAAシドニー分館への調査により収集された三井物産豪州政府による接収史料(主にSP1098/4-MBK-310、SP1101/1-MBK-415)に依拠したものであり、従来不明であった職員給与とボーナスの相関についての相関を導き出し、派遣職員の担当による異動可能性の問題や異動と昇進の実態について観察したものである。シドニー、メルボルンにおける三井物産の1920~30年代の職員の実態がここで浮き彫りにされたが、さらに同年夏、NARAにおい在米店、シアトル出張所の職員についてのデータが新たに入手され、これにより論点の補強、一般化の可能性が高まった点は本研究チームの昨年度の大きな成果であった。⑤については、主に共同研究者の秋谷紀男により「史料からみた日豪羊毛貿易と日本商社」、『政経論叢』第82巻3・4号(2014)などにより高島屋飯田を中心とした収集史料の史料紹介を積極的に展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
所期の目的である三井物産特別職員録を利用した職員給与と学歴の問題についての史料収集、データ化はチームの協力とチーム内での蓄積史料により一定の水準に達したと判断できる。上記の区分とした主な理由は、史料目録などが整備されていないNAAでの調査によって、職員のボーナス査定の実態や派遣職員の職務などの特性から来る異動可能性、異動と昇進にかかわる諸史料が発掘されたことによって、新しい諸問題点が浮上し、設定していた本研究目的を超える複数の大きな論点を提示する可能性が示唆されていることによる。 ただし、新たな諸問題について本格的な研究に入るためには、本研究の目的を達成し、一定の成果を社会に還元した次の段階で、仮説の組み直しや研究体制を整え直して展開する必要が生じているだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の所期の目的である商社の職員のキャリアパスと学歴等の問題については、本年度末の原稿収集を目指して著書として出版を行う予定である。可能であれば2016年度の出版助成を得たいと考えている。また、本研究の史料収集の段階で入手しえた新史料に基づく研究については、上の達成度で若干記述したように新たな別の研究としてスタートを切りたい。ただし、その解析の土台、プラットフォームの構築については、本研究の最終年度の仕事として処理していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度において予定していた名古屋商業学校(名古屋)卒業生および同窓会に対する調査が担当者(山藤竜太郎先生)の事情により2015年度実施と繰り延べられたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り延べられた調査を夏~秋に展開することに本使用額が充当される。
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