研究課題
これまでの研究から得られた知見として、以下のものがある。まず、職場環境と主観的感情の関係について検証した調査では、相互協調的自己観が優勢な日本人では、独立的な職場状況よりも協調的な職場状況において、よりポジティブな感情が高まる(もしくはネガティブ感情が低まる)という仮説を研究代表者らはもっていたが、これについては予想通りの結果を得ることが出来た。そしてこの結果は、伝統的な日系企業と外資系企業という一般的に人事制度が異なるとされる企業タイプで分けて検証しても、日本人社員については違いがみられなかった。次に、文化的自己観と職場満足の関係性を検証した調査を実施した。結果は、日系企業では独立的な自己観が職場満足に正に影響を及ぼすものの、協調的な自己観は効果を示さなかった一方で、外資系企業では独立的そして協調的な自己観の両方が正の影響を示した。つまり、ここについては伝統的な日系企業と外資系企業とで、異なるインパクトがみられたのである。結果の解釈として、我々は以下のストーリーを考えている。すなわち、『従来、日系企業では集団の維持機能が放っておいても上手く機能していた一方で外資系企業では、集団の維持機能を意識的に培ってきた。しかし、昨今の経済的理由・文化的理由によって、日系企業で集団維持機能が成り立たなくなってきており、その結果、現代の日系企業では集団維持機能をサポートする土壌が失われてしまっている可能性が高い。そして、維持機能が失われた場合、協調的な人は職場満足を感じないだろう』というものである。平成26年度は、上記知見を国内および国際学会にて発表した。平成27年度は、この知見を論文にまとめ海外ジャーナルに投稿する予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度4月時点で、本研究プロジェクトで予定していた全ての研究調査が既に完了している。以降は、これまでの調査データの分析および論文執筆作業が中心となる。
本研究の目的は、職場における社員のストレス、精神健康、幸福感を支える「社会・文化的基盤」ならびに「精神医学・遺伝的基盤」の双方の機能を検証することである。そして、この目的を達成するためには、『主観的な感情測定方法』と『生理指標測定方法』の2つのアプローチを実施する必要があると考えている。上記の研究実績にて記述した内容は、主に『主観的な感情測定方法』に基づく調査の研究実績である。そして、今後はもうひとつの『生理指標測定方法』に基づいた調査に対して知見獲得を目指し、総合的により信頼性・妥当性の高い研究成果の創出を試みる。生理指標調査に関しても、平成26年度時点で、既にデータ収集は完了しており、平成27年度は、このデータを分析することで、個人の心理状態やデモグラフィック状況と健康状況とがどのような関係性を持つのかについて実証的に検証する。本調査で得られた研究成果の発信については、学会発表および論文執筆を順次行っていく予定である。具体的には、学会発表に関しては経営学や社会心理学の国内および国際学会(候補地としては、アメリカ)にて本研究成果を発表する予定である。時期に関してはまだ明確ではないが、10月以降の学会を想定している。また、論文に関しては、経営学分野の海外ジャーナルに投稿を予定している。
平成26年度に計上した予算のうち、未使用額となったのは生理指標調査のデータ分析にかかる人件費、およびその成果発表としての学会参加費用等である。可能であれば平成26年度から分析を開始できるように予算計上していたが、データ収集が完了したのが平成26年度末であったため、上記作業は平成27年度に実施することとなり、次年度使用額が生じた。
次年度使用額は生理指標データの分析および学会発表にかかる人件費、旅費等として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 3件)
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