研究課題/領域番号 |
25285123
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
出見世 信之 明治大学, 商学部, 教授 (60248961)
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研究分担者 |
小山 嚴也 関東学院大学, 経済学部, 教授 (60288347)
谷口 勇仁 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60313970)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンプライアンス / 日本型経営 / 企業倫理 / ステークホルダー / 利害関係者 |
研究概要 |
本研究の目的は,企業不祥事を防止するための「日本型コンプライアンスモデルのダイナミズム」を,日本企業を対象とした詳細な定性的・定量的調査にもとづき,実証的に解明することである.平成25年度は、日本型経営,コンプライアンス研究に関連する文献ならびに各種資料(1 次及び2 次資料)を入手・渉猟し,これまでの研究をそれぞれ各自の専門領域の立場から多面的に研究を行った.また,先駆的なコンプライアンス体制を構築している企業をピックアップし,2 次資料を網羅的に収集し,調査を行うとともに,訪問調査を実施した.2013年8月には, 米国フロリダで開催された米国企業倫理学会において,“Antecedents of Business Ethics Practice Development in Japanese Firms”というテーマで報告を行い,日本企業のコンプライアンス活動の促進要因について,参加者と意見交換を行った. こうした中で,海外に展開している日本企業の中で,海外においても日本国内と同様に,コンプライアンスに取り組んできる企業を調査することから日本型コンプライアンスモデルをより明確にできるのではないかとの結論に至った。そのため,2014年3月にシンガポールで事業活動を行っている日本企業を訪問し,現地におけるコンプライアンス活動と日本における活動との間に相違があるか,確認した。シンガポールでは,日本と雇用慣行が異なることから,日本で行われている職場環境主導のコンプライアンス活動が必ずしも行われていないことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,日本型経営,コンプライアンス研究に関連する文献ならびに各種資料を入手・渉猟し,これまでの研究をそれぞれ専門領域の立場から多面的にサーベイを行うことができた.さらに,コンプライアンスの取り組みに関する一次情報や二次情報を整理し,日本企業のコンプライアンス活動の契機を確認できた.先駆的なコンプライアンス体制を構築している企業で,訪問調査やインタビューに協力してもらえるところを選定し,担当部署ならびに海外支社に対する訪問調査を始めることもできた.さらに,こうした研究の成果を日本経営倫理学会において,文献研究の成果の一端として,「職場環境主導型企業倫理活動と個人責任強調型企業倫理活動の理論的検討」や「利害関係者論から見たダイバーシティ・マネジメント」と題する報告を行い,米国企業倫理学会においては,“Antecedents of Business Ethics Practice Development in Japanese Firms”と題する報告を行い,日本型コンプライアンス活動の展開の契機について参加者と意見交換を行うことができた.これらの報告により,平成25年度に目標としていていたコンプライアンスモデルを構築するための分析枠組のあり方を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
分析枠組の精緻化を行い,少数企業を対象として,当該企業のコンプライアンス活動の具体的な内容,コンプライアンス活動の形成要因,コンプライアンス活動の効果に関する詳細な定性的研究を行う.日本企業の海外子会社におけるコンプライアンス活動の展開について,アジアを中心に調査し,日本型コンプライアンスモデルの精緻化を行う.事例分析の結果をもとに,日本型コンプライアンスモデルの精緻化ならびに,日本型コンプライアンスモデルの形成要因,日本型コンプライアンスモデルの効果に関する仮説を導出する. 定量研究の面においては,協力企業から得ている意識調査やコンプライアンス研修に関するアンケート調査を精査し,質問票調査のための予備的調査を完了し,質問票のストラクチャーを完成させる. 中間報告として,事例分析から導出された日本型コンプライアンスモデルのダイナミズムについて,日本経営倫理学会や米国企業倫理学会で報告を行う. 最終的には,日本型コンプライアンスモデルのダイナミズムを提示し,最終報告書を作成する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,以下の通りある.まず,平成25年度は,翌年に開催される米国企業倫理学会での中間報告を行うことを見送り,その代わりに海外でのインタビュー調査を行った.そのため,当初予定していた英文校閲を行わなかったので,そのために計上していた予算を次年度に使用することになった.また、当初は,米国や欧米でのインタビュー調査を予定していたが,これを日本企業が比較的狭い範囲に集まっているシンガポールにしたことにより,旅費についても当初予算よりも少なくなったからである. 平成27年度に米国企業倫理学会で中間報告ができるよう,今年度中に学会に投稿するための英語論文を作成し,英文校閲を利用する.また,平成25年度に引き続き,シンガポールの日系企業を訪問し,インタビュー調査を行い,定性的な研究を進めてモデルの精緻化を行う.
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