研究課題/領域番号 |
25285124
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
村田 潔 明治大学, 商学部, 教授 (70229988)
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研究分担者 |
アダムス アンドリュー 明治大学, 経営学研究科, 教授 (90581752)
浅井 亮子 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40461743)
折戸 洋子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (70409423)
清水 沙友里 一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会(医療経済研究機構(研究部)), その他部局等, その他 (60625408)
鈴木 静 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (80335885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経営情報 / 企業の社会責任 / 情報倫理 / 情報の実体化 / 疎外 |
研究概要 |
本研究は,営利組織,行政組織,医療組織が提供している個人化されたサービスがもたらしうる人間ならびに社会に対する負の影響とそれに関わる組織の社会責任について,情報の実体化とそれがもたらす疎外という観点から検証し,組織的対応のための具体的方策を提言することを目的として日米,日英ならびに日本と北欧諸国との国際比較研究を,経営学,情報倫理,政治学,医療政策,社会政策からの知見を動員した学際的研究として,さらに海外研究者との共同研究として実施するものである。 平成25年度においては,文献研究・事例研究を通じて,ICTベースドサービスがもたらす人間疎外の状況を記述するモデルとしてDividualisation Modelを開発した。これは,本来総体的存在として分割不能であった個人(individual)がICTの発展によって実質的に分割可能な存在(dividual)として取り扱われることになり,その結果として人間の非実体化と再実体化が行われ,人間のモノ化が進行することによって人間疎外状況が産み出されることを記述するものである。 また,ソシアルメディアを中心とする個人化されたオンラインサービスに関する,ユーザの認識について,パイロットアンケート調査ならびにフォローアップインタビュー調査を行った。この調査結果は,ユーザがオンラインサービスのビジネスモデルをほとんど認識しておらず,そのために自分たちが疎外状況に追い込まれる可能性があることを理解することが非常に困難である状況におかれていることを如実に示すものであった。 これらDividualisation Modelと調査の結果は,研究代表者・分担者の間で共有され,CSRならびに医療政策への応用が図られた。また,海外研究協力者との間でも非実体化・再実体化という現象について国際比較研究を行うための議論が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画において平成25年度の目標であった情報の実体化に関する記述的理論モデルの開発がすでに完了し,その応用段階へと歩を進めることができている。国内外の研究者との共同研究も順調に進み,またパイロットアンケート調査とフォローアップインタビュー調査も行われ,有用な知見が得られている。 また,研究業績も順調に積み重ねられてきており,来年度以降における研究業績のアウトプットの見通しも立っているため,当初の計画以上の研究の進展がみられると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては,前年度の文献研究,パイロットアンケート調査,フォローアップインタビュー調査の結果を踏まえ,追加のインタビュー調査を行うとともに,アンケート調査票の再開発と,再調査を行う。この結果に基づいて,Dividualisation Modelの精緻化に取り組み,また,ソシアルメディア,国の機関による個人情報収集,医療情報化の3分野に精緻化されたモデルを適用して,そこでの人間疎外状況を国際比較研究の枠組みで解明していく。さらに,非実体化・再実体化という現象の理論的解明を,さまざまな角度から推進する。たとえば,「現実逃避としての非実体化」といった視点が,研究代表者・分担者・海外研究協力者の間での議論において提案されている。 アンケート調査は,海外研究協力者のサポートを得て,日本を含む数か国で同時並行的に実施され,その結果は統計解析される。 研究成果の公表については,国内外の学会ならびに英文・和文ジャーナルへの投稿という形で行われる予定であり,積極的に情報発信をしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額については,英文論文校正費での使用を考えていた。しかし,英文論文の投稿締切が平成26年6月に延期され,それに伴い,英文論文原稿の作成時期を次年度にずらしたため次年度使用額が発生した。 上記の英文論文校正費として使用する予定である。
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