研究課題/領域番号 |
25285126
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤本 哲史 同志社大学, 総合政策科学研究科, 教授 (50278313)
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研究分担者 |
篠原 さやか 九州女子大学, 共通教育機構, 講師 (90618224)
野口 範子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40198578)
川口 章 同志社大学, 政策学部, 教授 (50257903)
開本 浩矢 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90275298)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロフェッショナル・コンフィデンス / キャリア形成 / 女性研究者 / 自然科学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はわが国における自然科学系女性研究者のプロフェッショナル・コンフィデンスがキャリア形成におよぼす影響やワーク・ライフ・バランスがキャリア継続に与える効果を明らかにすることにある。平成28年度は以下の3点を中心に研究を進めた。①2016年1月~3月に実施したインターネット調査のデータを用いて、男女研究者および技術者を対象に統計解析を進めた。この調査には仕事と私的生活の調整行動を探るために新規質問項目を盛り込んでいたため、前年度までは検証することが出来なかった適応とキャリア継続の関係性に焦点をあてて分析を行った。また、職場環境とキャリア継続およびプロフェッショナル・コンフィデンスの関連性を探るためのデータ分析も並列的に行った。②2014年度および2015年度に行ったデータ解析の結果を論文として取り纏め、複数の国際学会で学会報告を行うとともに、学会誌に論文投稿し公刊した。③日本との比較を行うために、セルビア・ベオグラードのふたつの研究機関(Institute of International Politics and EconomicsおよびInstitute of Political Studies)において女性研究者に対してインタビューを行った(2016年9月、計8名)。特に、女性研究者がキャリアを継続するためにとる「適応方略(adaptive strategies)」に焦点をあて、セルビアのトップレベルの研究機関において女性が正規研究職に就きキャリア形成するためにどのように仕事と私的生活の調整を行ってきたかを中心に探った。調査では若手研究者とシニア研究者の両方に対して聞取りを行い、女性研究者のワーク・ライフ・バランスの課題について情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、前年度に実施したインターネット調査のデータを継続的に解析することにより、女性研究者のキャリア継続とプロフェッショナル・コンフィデンスに関する研究を深化することできた。特に、職種間の比較を行うことによりキャリア形成過程における心理的課題が理工系女性に共通する可能性を見出すことができた点は今後の研究活動の方向性を探るうえで大きな収穫になったといえる。しかし、2015年度実施の調査では、いわゆるSTEM研究者(science, technology, engineering, mathematics)を対象者として限定していたためサンプル数の頭打ちが生じていた。このデータを用いて分析を行うなか、次第にサンプル数の少なさが分析結果に影響を与えている可能性が考えられるようになった。そのため、2016年度は調査対象者の専門領域を医学(medicine)および看護(nursing)まで拡大して調査を実施することを検討した。 また、2016年9月にセルビアで実施した女性研究者に対するインタビューでは、国際比較の観点から研究課題に対して重要な示唆を得ることが出来た。この調査では対象者の範囲を社会科学系の女性研究者に拡大したこと、また旧社会主義国の女性研究者を対象としたことにより、これまでの日本および欧米の理系女性を対象とする調査結果との比較が可能となり、今後の調査研究の方向性に新たな示唆と展望を得ることが出来た。 ただし、平成28年度は研究代表者の家族に病人が出たため、特に年度後半は研究活動に十分注力することが困難になり、追跡ヒアリング調査が予定よりも遅れることとなった。平成29年度は遅れを取り戻すために集中的な調査展開をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、平成25~27年度に実施したインタビュー調査の対象者を集中的に追跡する予定である。調査の実施時期については6月以降に調査開始できるよう各協力者にコンタクトし日程を調整する予定である。追跡調査では、前回調査から今年度実施の調査までに生じた生活および仕事上の変化を中心に、キャリア展望やワーク・ライフ・バランスの課題と関連付けながら情報収集を行う。特に、過去2年間に調査協力者の一部に生活上の変化が生じ始めていることが確認されているため(例えば、出産、育児休業取得、退職など)、これらの経験がどのように彼女らのキャリア意識や行動に影響をおよぼしているかに焦点をあてたヒアリングを行う。また今年度は、笹川平和財団のプロジェクト・マネージャーであるLily Yu氏と連携を図り、海外との比較調査の実施可能性を探る予定である。さらに、2017年度は新規のオンライン調査の実施を企画する。今回は調査対象者の専門領域の範囲をSTEM領域(science, technology, engineering, mathematics)から医学(medicine)および看護(nursing)まで拡大し、サンプル数の増加をめざす。また、2016年度に実施したインターネット調査のデータを活用し分析を進める。2017年度は、これまでに行ったデータ分析の結果を取り纏めた以下の論文を国際学会で発表することが決定している(2017年8月12~15日、112th Annual Meeting of American Sociological Association、論題 “Sexist Workplace Climate and Career Experiences for Japanese Women in Science and Engineering)。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、平成28年4月から10月にかけて2016年度に実施した調査データの解析を継続的に行い、平成29年3月までに次年度にはどのような対象者に対して調査を展開するのが適切か、またそれら対象者に相応しい質問項目がどのようなものかを検討する予定であった。平成28年11月には、2016年度の調査データの解析から、当初の想定に反してサンプル数の少なさが原因で安定的な結果が得られないことが判明した。研究遂行上、これまでは分析対象としていなかった専門職種に対する調査を実施し、次年度の研究を深化させる必要が生じた。計画の変更後は平成29年度4月に新規に追加する専門職種と測定項目の精査を行い、7月から9月にかけて調査企業と相談しながらサンプル抽出を実施、10月から11月に実査、そして11月から12月にはデータのクリーニングおよび基本集計を行うことを計画している。
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