研究課題/領域番号 |
25285131
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三道 弘明 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40167440)
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研究分担者 |
小出 武 甲南大学, 知能情報学部, 准教授 (50330486)
木庭 淳 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (90177882)
中島 望 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00095936)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カタログ通販 / ファッション商品 / 予約販売 / 2変量正規分布 / 予約販売量 / 実需要量 / 新聞売り子問題 |
研究概要 |
2013年度は精力的に文献収集を行い,様々な形態での小売りが実施している販売促進や経営戦略に関する研究の現状について調べ,研究レベルでの現状を概ね把握することができた. 一方,婦人服飾などのファッション商品を主たる取扱い商品とするようなカタログ通信販売においては,各シーズンの数か月前にはそれぞれの商品の販売量を決定して,製造業者へ発注を行わなければならない.このとき,それぞれの商品にどの程度の需要量があるのかを適切に判断することが重要であるが,これは難しい問題であり,これまでのところ確立された理論的方法は存在しない. 本研究では,現実がそうであるように,会員に対して予約カタログを送付し,各商品の予約販売を受け付けることを前提として考えた.これは,消費者にとっては,予約販売を受け付けてもらえることで確実に商品を購入できるというメリットを享受できるばかりでなく,通販企業にとっても実際の需要量に関する有益な情報を入手できるからである. ここでは(1)予約販売量,実際の需要量なる2種類の統計量が2変量正規分布に従うという仮定の下(2年分のデータで検証した結果この仮定には何ら問題はなかった),初めに前年度のそれらを用いて2変量正規分布のパラメータを推定し,(2)次に,今年度の予約販売量,実需要量も同じパラメータを有する2変量正規分布に従うものとして,今年度の予約販売量を与えることで今年度の実需要量の分布を導出するという方法を提案した.実需要量の分布さえ得られれば,対象がファッション商品であるがゆえに,次の問題は,品切れと余剰在庫のトレードオフを図る単なる新聞売り子問題となる. なお提案の方法では,各会員が予約販売でどのような商品を購入したかという情報は利用しておらず,単に予約販売個数しか利用していないが,それでもかなりの予測精度が得られることを実際のデータを用いて確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献収集に関してはかなりの数の文献を渉猟でき,研究レベルでの現状を概ね把握することができた.また,婦人服飾などのファッション商品を主力商品とするカタログ通販に関しては,研究実績の概要に記載したような方法を現実のデータに適用したところ,ある程度満足のできる結果が得られた.以上のことから本研究は,概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2014年度も継続して文献収集を行うと同時に,研究実績の概要に記載したような方法をさらに発展させ,その理論的側面をIFORS2014にて公表する計画である.また論文の執筆をも目指す.これに加えて,今年度も昨年度と同様,精力的に文献収集を行う.対象と考えているジャーナルは,Journal of Marketing, Journal of Marketing Research, Marketing Science, Marketing Letters, Journal of Retailing, Retailing and Consumer Services, Management Science などである.また更なる検証データの入手を目的として,一部カタログ通信販売企業との接触を試みる. 一方,2014年度からは,ポイントを利用した販売促進にも目を向ける.より具体的には,会員に対してバーゲンセールを案内する葉書やメールを送り,店舗に出向かせるという戦略である.これは案内で知った割引商品を買うという目的購買だけでなく,店舗で初めて気づいた商品を購入するという衝動購買を誘発させることが目的である.ICTが普及した今日多くの小売りがポイントカードを発行することで消費者に会員登録のインセンティブを与えたり,あるいはスマートフォンを用いて会員登録させたりして,合法的に住所,氏名,年齢,生年月日などの個人情報を収集している.今年度はこうしたポイントを前提とした経営戦略を対象として,その有効性について検討するとともに,新たな戦略を模索する.
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