2017年度の研究実績としては、2012年から積み重ねてきた韓国のハンセン病問題調査を、8月27日~9月2日にかけて、貸し工場事業がうまくいっているソウル近郊の定着村で集中的な聞き取り調査として実施。また、国内調査としては、熊本地裁での「ハンセン病家族集団訴訟」の第4回~第8回の口頭弁論期日が5月、7月、9月、12月、3月と開催されたので、すべて傍聴し、情報収集につとめた。並行して、仙台、首都圏、関西、四国、九州、沖縄の各地で「家族原告」を中心に当事者からの聞き取り調査を精力的に実施した。 わたしたちの調査が参与の度合いを高めた結果、「ハンセン病非入所者家族単独訴訟(鳥取訴訟)」の広島高裁松江支部での7月26日の期日では福岡安則が、熊本地裁での「ハンセン病家族集団訴訟」では12月4日の第7回期日において黒坂愛衣が、専門家証人として証言をした。 研究成果としては、福岡安則が『「こんなことで終わっちゃあ、死んでも死にきれん」――孤絶の生/ハンセン病家族鳥取訴訟』(総頁数298頁、世織書房、2018年5月刊)を上梓。日本解放社会学会誌『解放社会学研究』30号に、福岡安則「日本の家族集団訴訟、韓国の定着村のこれから――ハンセン病問題の現局面」を発表。埼玉大学の紀要『日本アジア研究』第15号に、福岡安則「裁判抜きの『重監房』――『ハンセン病と差別』覚書(その1)」、福岡安則・黒坂愛衣「篤信の仏教徒が国賠訴訟の先頭に立つ――ハンセン病療養所『星塚敬愛園』聞き取り」を発表。韓国ハンセン総連合会の機関誌『ハンセン』(81、84、85号)に、韓国ハンセン病問題調査の報告を連載。第90回日本社会学会大会、第33回日本解放社会学会大会で学会報告をした。なお、2015年に出版した黒坂愛衣『ハンセン病家族たちの物語』が、ハンセン病市民学会の「第1回神美知宏・谺雄二記念人権賞」を受賞した。
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