研究課題/領域番号 |
25285147
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
杉野 勇 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (80291996)
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研究分担者 |
轟 亮 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20281769)
平澤 和司 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30241285)
小林 大祐 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (40374871)
荒牧 草平 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90321562)
俵 希實 北陸学院大学, 人間総合学部, 教授 (60506921)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会学 / 社会調査方法論 / コンピュータ支援 |
研究概要 |
研究の目的は,政策形成や制度設計に有効な知見を産出する為の社会調査の,方法論的・技術的検討を行う事である。標本抽出枠の検討とデータ収集モードの検討が主な研究課題として存在するが,日本ではこれらフレイム効果とモード効果の研究,そして社会調査へのICTの導入の両面で欧米に遅れている。よってこれらの方法論的研究を進める事が第一の目的で,その為に調査方法論の先進諸国から先端的情報・知見を収集し研究交流を行う事が第二の目的である。 研究の立ち上げとして7月6,7日に金沢にて第一回全体研究会を開催して調査設計と海外交流の全体計画について審議した。交付額が申請額の2/3であった為主たる実査を二年目に行う事とし,初年度はその準備や外国での情報収集,余裕があれば小規模のウェブ又は郵送の調査を計画した。国際動向の検討については,隔年で開催される欧州社会調査学会(ESRA)の学術大会(7月)に研究代表者と指導役分担者の二名が参加して最新情報収集に努めた。更に海外研究者とのネットワークは,担当分担者が当該分野の権威的研究者の助言と協力を得て着実に計画を進め,欧米への視察を2013~2014年度に行う目途がたった。2014年初めまで,限られた予算の中で小規模調査の実施か海外視察か分析環境の整備かの検討を続け,結果として小規模調査実施は見送り,海外視察は次年度以降となった為,予定していた統計分析ソフトの更新契約を行った。 調査実施に関しては,本課題分担者中三名が関与する別の大規模調査研究と協力関係を結び,相互の実施する調査を密に関連させ有効活用する事とした。その結果,本研究課題では資源を最大限集中させてICT支援型の実験的・方法論的調査を実施する事とした。その為初年度分助成金を大幅に繰り越しH27年分を前倒し請求した。現在はこの協力関係の下で調査設計を進め,H26年9月の調査実施を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二つの課題のうち第二の課題の,海外の先端的研究の情報収集と国際交流ネットワーク構築については,予定していた欧州の専門学会大会に参加する事も出来,また外部の著名な研究者の助言を得て交流計画の目途も経っているので,おおむね順調に進展していると言える。但しもう一方の方法論的な社会調査の実施に関しては,予想以上に予算制約が厳しくなった事も影響して,当初想定していた中小合わせて二回ないし三回の調査実施が一回に限定され,しかも他の大規模調査研究との協働の中で行う事となった。大規模プロジェクトとの協働によって資源と知見の有効活用が出来る利点がある一方で,必ずしも本研究課題だけで調査計画を進める事が出来ないと云う事情が発生した。相手方の大規模調査と共通のプラットフォームで調査を実施する方向で検討が進んでおり,先方の機材の準備やシステム開発の進捗状況にこちらのスケデュールを或程度合わせざるを得ない。しかし先方の実査の方が半年程遅い時期を予定している為,当方からすればシステム開発や調査設計の共通項目の詳細決定などの進捗状況が遅めになりがちである。以上から,実査詳細の見通しや設計に関しては,予定よりはやや遅れがちであると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は,他の大規模調査研究との協力関係の下で,データ収集モードの実証的比較研究を行う予定である。調査費用抑制の観点から選挙人名簿を使用する事を想定し,モードとしては,CAPI(Computer-Assisted Personal Interviewing)とCASI(Computer-Assisted Self Interviewing)というICT支援型の二種のモード,そして費用の上で可能であれば従来型の紙媒体でのPAPIの併用を考えている。これによって当初の最大の目的であるICT支援型の調査モードの比較研究が可能になる。調査費用は初年度の繰越分と最終年度の前倒し請求分などを全て合算し,中小規模の社会調査ではあるが可能な限り拡大もしくは複合化して,方法論的な比較分析が出来る事を目指す。それと同時に,ICT支援型の社会調査の実例として,調査実施にまつわる様々な課題や困難を明らかにして,上述の大規模調査研究をはじめとした後続の社会調査実施の改善に資する事をも役割としている。 予算の大部分を方法論的なモード比較調査実施に割り当てる為に海外視察や国際学会参加は厳しくなるが,7月には横浜で,四年に一度の国際社会学会大会が開催されるので,その機会に海外の代表的研究者との交流を企画できる様に検討・交渉中である。また,初年度の海外旅費の一部を繰り越しておいたので,それを利用して例えばアメリカの調査センターなどへの視察も行える可能性がある。これも担当分担者が精力的に交渉中である。 最終年度であるH27年度には調査を実施する資源は残ってはいないが,二年目に実施した調査データの分析と研究の纏めに,早ければ二年次後半から集中する事とし,進捗状況によっては欧州社会調査学会大会での研究発表や,国内の専門学会誌での成果発表を目指している。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の全体会合において3年間に実施する社会調査の全体計画を検討し,その後夏から秋にかけて,協力関係を結んだ他の大規模調査研究との間で情報交換をし,調査専門会社から見積もりを取ったりして検討を続けた。その結果当初考えていた以上にICT支援型社会調査に費用を多くかけざるを得ない事が明らかとなった。限られた資金の中で選択と集中を行う事が望ましいとの結論に達し,中間年に予定していたメインのICT支援型調査に出来る限り資源を集中投下する事に決定した。その為,予定されていた初年度夏前の国際学会視察の支出を除いて初年度の助成金使用を凍結し,二年目に繰り越し,調査実施の費用に充てる事とした。 初年度の繰越分の助成金,二年目の補助金と助成金,そして最終年度の助成金の前倒し請求を全て合わせて,メインのICT支援型の,モード比較の為の方法論的な社会調査の実施費用に充てる予定である。
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