研究課題/領域番号 |
25285147
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
杉野 勇 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (80291996)
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研究分担者 |
轟 亮 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20281769)
平澤 和司 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30241285)
小林 大祐 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (40374871)
俵 希實 北陸学院大学, 人間総合学部, 教授 (60506921)
荒牧 草平 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90321562)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会学 / 社会調査方法論 / コンピュータ支援 |
研究実績の概要 |
主たる目的であったモード比較に関する方法論的社会調査について,上半期に他の大規模調査プロジェクトとの協力関係を結びながら企画・設計を進め,夏の終わりに漸く調査会社との契約に至った。調査の実施は2014年10月から2015年1月までの3か月以上に及んだが,タブレットPC2台を用いたコンピュータ支援型他記式調査(CAPI),従来型の紙の調査票を用いた他記式調査(PAPI),タブレットPC1台を用いたコンピュータ支援型自記式調査(CASI)の3モード比較調査を,1都3県にて実施した。設計標本サイズは1080人,最終的な回答率は35%強とかなり小規模なものとなったが,原則として同一の調査員が同一地点にて3モード全てを担当するなど,他に余り類を見ない方法論的な比較調査が行えた。2015年国勢調査ではインターネット回答が本格的に導入されるが,こうした調査方法の転換期に於いて方法論的な比較調査を実施出来た事は,調査の方法によって得られるデータにどの様な相違が生じるのか/生じないかを明らかにする上で大きな意義が有る。実査が終了して間もなく分析用データを整備出来た事もコンピュータ支援型調査ならではの利点である。実査終了とほぼ同時にヨーロッパ社会調査学会への大会報告申込を行い,また国内専門学会誌でのコンピュータ支援型社会調査に関する特集企画も進めている。 平成26年度は上記の調査実施が主たる課題であったが,9月に合衆国のミシガン大学・シカゴ大学の社会調査センターを訪問し,方法論的調査への助言を得,合衆国での現況についての情報収集を行った。この出張により,学会誌特集企画に国際的に著名な専門家からの寄稿を得るという予想外の成果が得られた。7月には横浜での世界社会学会大会の機会にヨーロッパの社会調査の専門家と会合を持ち,合衆国とはまた異なるヨーロッパでの社会調査事情を知る事が出来て有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度前半はかなり計画が遅れ気味であったが,本研究課題の一番の目的であり懸案であったモード比較調査を,CAPI, PAPI, CASIの3モード比較調査として企画・実施・終了する事が出来た。小規模ではあるが調査員配置についてもかなり希望通りの実査を行う事が出来た。予算規模の小ささやシステム開発上の問題,現在の日本の調査会社の遂行能力などの観点から,せいぜい2モード比較しか出来ないのではと思われたところ,3モードでの比較実査が出来た事から,当初の遅れを十分に埋め合わせて余りある計画遂行であると言える。その調査データの分析結果の公表に関しても,調査協力者への結果フィードバックをも含めて調査結果概要をウェブサイトにて公表している(下記URL参照)。1月末のデータ納品から3月初頭にはこうした結果を公表出来たのはコンピュータ支援型調査の利点であり,実査開始以降は極めて順調に進捗していると考えている。 〔調査結果概要公開URL: http://www.li.ocha.ac.jp/hss/socio/sugino/summary.html〕 加えて,既に国際学会での報告申込と国内専門学会誌での特集企画が予定されており,極めて順調に,当初の計画通りに進展していると判断する。 1年前の時点と比較すれば「(1)当初の計画以上に進展している」とさえ言えると考えるが,平成25年度開始時点の(かなり野心的な)計画と比較すると,計画通り順調に進展していると評価するのが相当であろうと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施した3モード比較調査のデータ分析を進め,7月のヨーロッパ社会調査学会大会での報告をはじめとして,国内外での学会大会での報告を行っていく。アイスランド・レイキャビクでのヨーロッパ社会調査学会大会には,研究代表者ほか4名が参加する予定である。また,数理社会学会の学会誌『理論と方法』にて「コンピュータ支援型社会調査の可能性」をテーマとした特集を企画しており,データ分析に基づく論文執筆を含めた特集号の刊行を予定している。更に,アメリカ社会学会大会にも代表して若干名が参加し,情報収集と国際交流を進める予定である。 社会調査の実施に関しては,国際学会参加の為の出張旅費の多寡によって計画が左右されるが,現時点ではWeb調査に関しての小規模な方法論的調査を検討しており,可能であれば上半期のうちに(遅くとも2015年末迄に)実査を行う事を目標として企画検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に主目的である方法論的な比較調査を実施する予定で,初年度基金分からの繰越,次年度基金分からの前倒しを利用して出来る限りの財源を集中させた。しかし平成27年度に入って,協力関係を結んでいた他の大規模調査プロジェクトとの協議や調整も含め,約4ヶ月かけて調査設計などを綿密に計画し直し,最終年度での研究成果発表の方法なども考慮した結果,平成26年度実施の調査の規模を縮小し,最終年度での国際学会参加旅費,及びウェブ調査に関しての方法論的調査実施の費用に充てる事とした。海外旅費,調査の実施,いずれも少なくとも200万円程度の費用が必要だと概算された為,基金助成金分を極力最終年度に繰り越す事とした。
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次年度使用額の使用計画 |
7月のアイスランド・レイキャビクでのヨーロッパ社会調査学会大会への参加(連名報告者4名程度)と,8月のシカゴでのアメリカ社会学会大会への参加(1~3名)の為の海外旅費に優先的に充当し,残額は主としてウェブ調査に関しての比較方法論的な調査の実施費用に充てる。その他,若干の物品費と,最終的な報告書印刷経費として数十万円を見込んでいる。
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備考 |
2014年度に実施した社会調査の結果速報。調査依頼書等で速報結果公開を約束していたもの。予定通りに,予定よりもかなり詳細な集計結果を公開する事が出来た。
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