研究課題/領域番号 |
25285161
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
瀧本 佳史 佛教大学, 社会学部, 教授 (00329989)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 米軍基地 / 軍用地料 / 地域社会 / 地域自治 / 字誌 / 返還跡地 |
研究概要 |
軍事基地が日常的に存在する地域社会の人々の暮らしはどのようなものであるかの解明を目指している。フィールドを沖縄本島に設定しており、7~9月、2~3月の現地での調査研究と、その他の期間の研究者メンバーの研究会活動が主体となる。 軍用地料が共有地に対して配分されている自治体が対象となる。まず配分されている自治体の当該課に以下のヒアリングを行う。①軍用地(公有地)の対象区(字)、②「区長会名簿」(区長名、電話、所在地)の有無、③過去数年の分収金額の一覧表、④軍用地(公有財産)の管理等に関する条例、規則の収集。 次いで、区レベルに対し、区長を対象としたヒアリング調査に取り掛かり、分収金収入のあるすべての区長に面談する計画である。その他、隣接する分収金収入のない区にも対比のため出来る限りヒアリング調査する予定である。 軍事基地は永久的に存在するとは限らず、重要性の低いものは順次返還されてきた経緯がある。返還されると軍用地料は当然入ってこなくなる。分収金収入のある自治体はその時以降の財政をどのように考え、対応しようとしているのか。また、区長を含め、当該の住民たちはどのように考え、対策を練っているのか。様々な対応策の事例を掘り起こすという課題が出て来ている。 軍事基地のため居住していた土地を離れなければならなかった区も多く存在する。歴史的に自分たちのルーツを確認するために「字誌」をつくる区も多く存在する。これが住民の統合や自治にとっていかなる作用があるのか、それらが逆機能的に排除を生むことはないのか、これらも今後の課題として浮上してきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分収金収入のある自治体は沖縄本島の中・北部に多く、自治体の当該課との信頼関係の構築、区長への紹介や区長との信頼関係の醸成など課題が多い。参加する研究者も多人数であり、自治会単位で分担するも単独行動よりは集団行動となるので、一律に進度が揃うことは期待できず、進んでいる所とやや遅れている所が出て来ている。 当初の企画通り進展しているとは評価できず、おおむね順調に進展していると評価するのは以上の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の経験を踏まえ、重ねて現地でのヒアリングを行うことで、対自治体や当該課の職員との信頼関係、区長や地区住民との信頼関係はさらに強固なものとなり、われわれの知見も深まるとともに、研究の更なる展開が期待される。研究メンバーがさらに回数を多く現地調査をするか、調査期間を長期化して研究を推進するという方策を進める。 個人地主とは異なって共有地に対して支払われる地料には自治体、議会、区会、住民、郷友会などのプレイヤーが参画し、その配分劇にはそれぞれの地域社会に多様な葛藤を生じさせている。いわば地方自治の実験室でもある。個人地主が多く、しかも都市的地域である南部の自治体や、区会、自治会では分収金収入のある自治体、区をどのような視線で見ているのか、これらも追及すべき新たな課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
全体としての執行率は70%を超えたが、旅費の部分が60%と想定外であった。活動メンバーが10名、非活動メンバーが数名いたので、誤差が生じている。 初年度であるのでどの程度使っているのかを研究代表者がつかみ切れなかったのと、めいめいの研究者が節約志向で、旅費が抑え気味になった、これらが次年度使用額が生じた理由である。 25年度はメンバー当たり2回の調査を想定していた。日程を調整し被調査者の都合も考慮し、回数を多くすることと、滞在期間も長期化するよう計画することで、調査研究の実効をあげるとともに予算を適正に執行する計画を立てる所存である。
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