研究課題/領域番号 |
25285167
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
矢島 卓郎 目白大学, 人間学部, 教授 (60438885)
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研究分担者 |
雪吹 誠 目白大学, 人間学部, 准教授 (70438886)
山下 利之 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (90191288)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重症心身障害 / 体感音響装置 / 療育活動 / 心拍変動 / サーモグラフィ / スペクトル解析 |
研究実績の概要 |
1.全国の医療型障害児入所施設の調査結果の論文作成と投稿 医療型障害児入所施設における日中活動の現状を明らかにするため、全国122ヵ所の公法人立施設に対して、郵送法によりアンケート調査をおこなった結果をまとめ、目白大学総合科学研究に投稿した。その結果、96%の施設で超重症児や準重症児が日中活動に参加していた。日中活動の規模は、2~10名、活動時間は31~60分が多く、その活動を主に、保育士、看護師、介護福祉士が少人数で担当していた。日中活動の内容は、いずれの施設も音楽などを利用した静的な取り組みが多い一方で、中・大規模施設では、集団音楽活動や園芸など動的な要素を含む活動がおこなわれていた。活動を担当する職員は、活動内容、活動の種類、職員間の連携と配置に加え、利用者の参加頻度や体調などにも配慮していた。特に、94%の施設の職員は、日中活動に困り感を持っており、支援スタッフの配置、利用者の参加頻度の調整、刺激強度や室内環境などが共通の悩みがあることを明らかにした。このことも踏まえて、集団で体感音響装置を作成する意義が確認できた。また、重症児者の療育活動を踏まえ、日中活動を日中療育活動とすることを提案した。 2.集団活動で体感音響を個別に提供する装置の開発を模索 1台のアンプから1~10名の重症児を対象に振動による音響を個別用に振動板を内蔵したクッションで一斉に提示する装置の開発を模索した。当初は、10人規模を予定したが、与える振動の強度を一定に保つことが難しく、また、アンプ出力の高い装置にすると費用がかかることを考慮して1~8人を対象とする装置にすることとした。いずれにしても、この装置の開発とその有効性の検証が本研究の最終目的でもあり、一定の成果が認められれば、産学連携への展開が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度より研究代表がこれまでの研究科長に加えて学部長になったこと、研究分担者は入試委員長の任期2年目であったため、協働して研究を進めにくい状況になった。そのため、28年度の研究をこれまでのアンケート調査による研究をまとめて論文にすること、最終目標である集団活動で個別に振動を呈示する装置を業者と連携して製作すること、に研究を集約することとした。 集団療育活動において、そこに参加した個人ひとり一人に対して振動を一斉に呈示する集団式体感音響装置の完成はまもなくであり、助成金の延長が認可されたことを踏まえて、29年度には、この装置を活用した振動刺激受容の効果を検証するという最終目標を達成するため、一層努力することにしている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の延長に伴い平成29年度は、以下の4研究とし、3・4研究に重点を置く。 1.健常者に対する体感音響装置(ベッドパッド)によるオラヴ博士の振動駆動周波数とジェネレーターを活用した振動刺激に伴う受容特徴の検討1:前実験で得られた結果をふまえた平均強度になるよう、35-80Hzの周波数をオラヴCDでリズミックに振動を呈示する群と一定の強度でジエネレータで駆動されて振動する群について、健常学生各10名を対象に各周波数3分間呈示し、その振動刺激受容の特性を生理指標(心拍、皮膚温、唾液アミラーゼ値)と心理指標および行動観察から総合的に検討する。 2.健常者に対する体感音響装置(ベッドパッド)によるオラヴ博士の振動駆動周波数とジェネレーターを活用した振動刺激に伴う受容特徴の検討2:検討1と同様にデザインで、最も効果のあった周波数について呈示時間を3分、5分、10分の3種類とし、最もリラックスに効果のある呈示時間を検証する。 3.重症児者に対する体感音響装置(ベッドパッド)によるオラヴ博士の振動駆動周波数とジェネレーターを活用した振動刺激に伴う受容特徴の検討:健常学生が心地よい感じた周波数、振動刺激強度と呈示時間を設定し、5名の重症児者に対してオラブ博士のCDとジェネレータ出力で駆動する体感音響装置を用いた取り組みを行い、その効果について心的活動を反映する生理指標(心拍、皮膚温、唾液アミラーゼ値)と心理指標および行動観察から総合的に心地よい呈示法を検証する。 4.集団式体感音響装置による療育活動の効果に関する検討:現在開発中の集団活動における個別に振動刺激を呈示する集団式体感音響装置を活用して重症児者8名に一斉振動を呈示し、VTRによる観察とサーモグラフィによる変化を指標にその効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の最終目的である重症心身障害児者の集団日中療育活動に参加する個人に対して個別に振動刺激を呈示する装置の開発に時間がかかったため、購入費用を使用できなかった。具体的には、アンプから一定の刺激強度を10名に個別に呈示することを可能とする集団式体感音響装置を模索したが、10個の振動盤から均一の強度で呈示することができなかったため、製品化するまでに至らなかった。その後の検討で、8名までであれば均一強度の刺激呈示は可能であることが確認できた。また、このことに加えて、アンケート調査結果から療育活動は6~10名の集団で行っている施設が最も多かったことから、集団式体感音響装置は、同時に8名の参加者に対して振動刺激を呈示する装置とした。本装置は、研究への使用が確認できたため、次年度に購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越しになった約95万円の助成金のうち、重症心身障害児者の集団日中療育活動で参加者に個別に振動刺激を呈示する装置(集団式体感音響装置一式)に対する費用として、約80万円を予定している。そのほか、研究推進のために、謝金およびアルバイトなどの人件費などに使用することを予定している。
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