研究概要 |
本研究は,訪問介護の満足度に影響する事業所要因の解明であるが,利用者との窓口であるサービス提供責任者(以下,サ責)の調整業務が不十分であれば,利用者満足度は低いと思われるので,サ責の調整業務に影響する事業所要因をまず分析することにした.H23年に行った東京都区部の訪問介護事業所のサ責調査データ(n=547)をもとに,事業所の組織運営の違いを,リーダーシップ,組織風土の活発性,サ責への連絡時間の保証の有無の3変数で表し,次のようなモデルを設定した. 事業所管理者のリーダーシップが組織の活発性に影響し,組織の活発性と「連絡時間の保証」が調整業務に影響し,調整業務は,職務満足感を介して離職意向に,またバーンアウトを介して離職意向に影響するという因果モデルである.分析の結果,モデルの適合度は許容範囲であった(RMSEA=.069) 変数間のパス係数をみると,リーダーシップの関係行動から組織の活発性へは.44,組織の活発性から調整業務へは.73であった.連絡時間の保証から調整業務への係数は-.19であり, 組織の活発性と連絡時間の保証の有無により調整業務は大きく影響されていた. 調整業務から職務満足感への係数は.74,職務満足感から離職意向へは-.25であった.次に調整業務からバーンアウトへの係数は-.60, バーンアウトから離職意向へは.72であった. 職務満足感とバーンアウトによって離職意向の分散の74%が説明された.事業所の組織運営の違いは,サ責の調整業務のレベルに影響し,職務満足感とバーンアウトを介して離職意向につながるという本研究の仮説は支持されたと考えてよいと思われる.
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