研究課題/領域番号 |
25285168
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
須加 美明 目白大学, 人間学部, 教授 (40271457)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会福祉 / 高齢者福祉 / 訪問介護 / サービス提供責任者 / メンタリング行動 / 離職意向 / 職務満足感 / 介護への仕事観 |
研究実績の概要 |
本研究は訪問介護の満足度に影響する事業所要因の解明であるが、当初の計画で構想した利用者の満足度とサービス提供責任者の調整業務の達成度を関連づけた調査を行うことは、倫理的に好ましくないことが判明したため、別のアプローチを用いることにした。すなわち職員の離職が多い事業所は、安定したサービス運営が不可能になるため、利用者からの苦情の多いことが介護保険サービスでの苦情結果などから分かっている。ここから離職者の多い事業所の利用者満足度は低いと想定できるので、訪問介護員及びサービス提供責任者の離職に影響する事業所要因を探ることを当面の研究目的にした。 先行研究から実際の離職に直接影響を与えるのは離職意向であること、離職意向には職務満足感とバーンアウトが影響することが分かった。これらに影響するであろう事業所の組織風土などの諸変数との関連を調査仮説にし質問紙調査を実施した。調査票は事業所、サービス提供責任者、訪問介護員の3種類とし、平成26年9月~10月、全国の訪問介護事業所から約5千件を抽出し協力を依頼した。協力回答があった375事業所に対し、所属する職員数の調査票を送り、事業所調査は283件(76%)、サービス提供責任者は673件(74%)、訪問介護員は2555件(49%)の有効回答を得た。データをもとに事業所の組織運営の違いがサービス提供責任者の調整業務に影響し、職務満足感とバーンアウトを介して離職意向につながるという因果モデルをつくり、その適合度を検討した。モデルの適合度はGFI=.856,CFI=.901,RMSEA=.067で許容範囲であった.訪問介護員についてはサービス提供責任者のメンタリング行動とキャリア面談制の有無を事業所要因とみなし、それがヘルパーの介護仕事観に影響し、職務満足感とバーンアウトを介して離職意向につながるという因果モデルをつくり、その適合度を検討した. モデルの適合度はGFI=.889,CFI=.908,RMSEA=.071で許容範囲であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事業所調査(n=283),サービス提供責任者調査(n=673),訪問介護員調査(n=2555)のデータファイルが得られのは平成26年12月末であったが、その後精力的に分析し、「サービス提供責任者の調整業務と離職意向の因果モデル~事業所の組織運営の違いが,調整業務と離職意向に及ぼす影響」を老年社会科学に投稿した。また6月21日の日本地域福祉学会において「サービス提供責任者のメンタリング行動がヘルパーの介護への仕事観と離職意向に与える影響」を口頭報告する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で記したように当初の構想であった利用者満足度とサービス提供責任者の調整業務の達成状況を関連づける調査設計は、倫理的に困難であったため、訪問介護員及びサービス提供責任者の離職に影響する事業所要因の解明を本研究の目的に変更した。訪問介護事業所の全国調査のデータをもとに、サービス提供責任者と訪問介護員のそれぞれにおいて離職意向に影響する変数の因果モデルを作成したが、調査報告書は平成27年度に作成、刊行する計画にしている。調査に参加した事業所に対して調査から得られた人材育成に役立つ知見をフィードバックする報告会を研修形式で行う予定である。また、まだ分析されていない変数間の関連を統計解析し、学会報告につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要で記したように当初構想した利用者満足度調査とサービス提供責任者調査を関連づける設計が不可能になったため調査の計画と調査仮説を大幅に変更することになり、研究計画がずれることになった。このため経費を次年度に残すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
利用者満足度調査に代わり、訪問介護事業所の全国調査を行い、事業所、サービス提供責任者、訪問介護員という3種類の調査データを得た。この実施と集計、分析に費用を充当する。
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