研究課題
本年度は、累積的文化進化に関する諸問題を検討するために、以下2つの研究を行なった。①昨年度、累積的文化進化の実験室実験を実施した。ペアとなった参加者が限られた時間内で技術を習得する。その技術が別の参加者へと伝達されていく状況、すなわち技術が世代から世代へと伝達されていく条件においては、同一のペアが入れ変わることなく繰り返し技術を習得していく状況、すなわち技術が個人の内部で蓄積されていく条件と比較して、世代を経るにつれて技術が単純化することが見出された。そして、技術の単純化は伝達というプロセスが複雑な技術に対する淘汰圧として機能していたためである可能性が見出された。本年度は、この説明の妥当性をサポートするために、この実験データに対してさらに精緻な分析を行い、この結論の妥当性を検証した。②文化進化研究においては、文化とは人から人へと伝達される情報として定義されている。本年度はこうした伝達される文化のもう一つの例として物語に着目した。宗教の発生に関する認知科学・人類学の研究においては、因果推論における認知バイアスが超自然的存在という概念の源泉であるという議論がある。この議論を援用し、この因果推論上の認知バイアスが駆動しやすい状況においては、超自然的な存在に関する物語が伝達されやすくなると同時に累積的に蓄積されていく可能性を検討した。複数の実験の結果、概ね仮説を支持するデータが得られ、物語の文化進化における認知システムの影響について新たな知見を追加した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 19471
10.1038/srep19471