研究課題/領域番号 |
25285177
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 勧 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80134427)
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研究分担者 |
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 謙遜 / 比較文化 |
研究実績の概要 |
本年度は、質問紙法、IAT(implicit association test)、ERP(event related potential)による三つの手法を用いて、引き続き実証研究を行った。質問紙実験では、日本、韓国、米国、ニュージーランド、オーストラリア、インドネシアなどにおいて、謙遜にかかわる動機付けおよびそこで果たしている自尊心の役割について、Rosenbergの自尊心尺度、Caiらの謙遜尺度という個人差尺度も用いて、データを収集あるいは収集中である。これまでのところ、どの文化でも少なくともある程度は謙遜を行うこと、また、相手が謙遜していることを理解して対応することが一般的であることがわかった。また、IAT実験では、自己と肯定性、自己と謙遜、謙遜と肯定性について、それぞれの潜在的意識レベルでの連合の強さを測定した結果、潜在的意識のレベルでは自己と謙遜以外との連合の方が強いことがわかった。このことは、潜在的意識のレベルでは、実験に参加した日本人被験者にとって、自分と謙遜とが非謙遜よりも結びつきにくいことを意味している。これは、必ずしも日本人が自分を謙虚とは思っていないこと、そして、謙遜しているときでも、本心から謙遜しているわけではないことを示唆している。さらに、自分の謙遜についての顕在指標との相関を見ると、謙遜を他者から良い印象を得るための道具であると捉える戦術的謙遜の得点が高いほど、謙遜を潜在的に否定的に捉えていることが明らかになった。このことも、日本人の謙遜が本心からのものではないことを示唆している。 なお、ERPについては、予備実験を行い、測定の安定度を高めるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質問紙法における実験は、順調に進行しており、現在比較文化的な研究を進めているところである。IATについては、すでに日本での実験を終了し、比較文化的なデータ収集の準備をしているとこである。ERP実験については、まだ日本においての予備実験にとどまっているが、全体としては、おおむね順調に進展している、と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、質問紙実験については、すでに他文化におけるデータ収集が開始されている。また、IATに関しても、現在刺激後などの翻訳を進めており、近々にデータ収集を行う予定である。それぞれのプロジェクトについて、今後比較文化研究の対象国を増やしていく予定である。今後データの分析を進め、学会発表において研究についてのフィードバックを受けた後、論文の執筆に進む予定である。 さらに、ERPについては、比較文化的なデータを踏まえ、脳生理学的な基盤を確認する研究を国内で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度により多くの研究費が必要となるであろうと考えられたため、節約に努めたため。
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次年度使用額の使用計画 |
おもに比較文化研究のためのサポートと国際学会における発表のために費消する予定。
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