研究課題/領域番号 |
25285188
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
内山 伊知郎 同志社大学, 心理学部, 教授 (00211079)
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研究分担者 |
青山 謙二郎 同志社大学, 心理学部, 教授 (50257789)
田中 あゆみ 同志社大学, 心理学部, 准教授 (00373085)
細川 徹 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60091740)
石川 隆行 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (50342093)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発達心理学 |
研究概要 |
本研究は、ある発達過程が新たな心理機能の発現につながるという機能的な観点から乳幼児期の発達を体系的に理解することを試みている。本研究では、乳児期における空間認知と感情を行動発現との関連で検討する。とくに、乳児期おける自己移動経験を豊富化する訓練は、新たな機能的関連の発現機序を解明するために重要となる。また、乳児期から幼児期にかけての発達では社会性が発達し、社会的認知、社会的感情、社会的行動の機能が顕著に発現する。そこで、社会的視点を重視した心理諸機能を分析し、乳児期の行動発現が空間や他者に関する心理諸機能、さらに社会性発達に及ぼす影響を総合的に検討する。 本研究では、乳児の移動経験に焦点をあて、バーチャルムービングルームを使用した斜面や深みでの恐れ感情と対処、AB課題を応用した空間探索課題などを使用した空間認知能力、共同注意について基礎的な機序を検討した。また、移動経験を乳児用電気車(PMD)により“豊富化”する手法を用い、認知、感情機能の促進効果を検討した。 1) 乳児の年齢一定手法を使用し、同一月齢における行動経験が心理機能の発達に及ぼす影響を体系的に検討する。ハイハイが開始される前後の7~9ヶ月児が対象となる。a. 斜面知覚による転倒への恐れと自己受容感覚、およびその対処行動:①バーチャルムービングルームによる検討 ②ビジュアルクリフおよびムービングルームを使用した検討、b. 自己移動経験と空間認知能力: ①従来のAB課題を測定するものを空間認知能力測定に改良した装置による検討、②空間刺激を3次元で提示し、馴化手法を使用して認知能力を測定するFE課題装置による検討、2) 自己移動経験の豊富化訓練の効果、3) 乳幼児期における感情システムの機能的な発達的検討:積み木課題などによる検討、4) 社会的認知―社会的感情―行動系の関連と社会性発達の検討、5)障害児における発達的検討
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、乳児の移動経験に焦点をあてムービングルーム、バーチャルムービングルームを使用した斜面や深みでの恐れ感情と対処、AB課題を応用した空間探索課題などを使用した空間認知能力、共同注意などについて基礎的な機序を検討している。また、移動経験を乳児用電気車(PMD)により“豊富化”する手法を用い、認知、感情機能の促進効果を検討した。 7ヵ月児にPMD訓練を実施し、ムービングルームとビジュアルクリフの成績を比較した研究から深さの恐れ発現と視覚的自己受容感覚の関連を明らかにした成果は、国際共同研究としてPsychological Science誌に報告された(The epigenesis of wariness of heights.) ハイハイが開始される前後の7~9ヶ月児を対象としたバーチャルムービングルームによる斜面知覚による転倒への恐れと自己受容感覚の研究では、斜面に対する姿勢補償についての知見が「行動科学」誌に掲載されている(上りおよび下り斜め方向の仮想的な光学的流動に対する乳児の姿勢補償)。 自己移動経験と空間認知能力に関しては ①従来のAB課題を改良した装置による検討、及び共同注意による検討を国内学会(日本心理学会第77回大会)で発表している。 乳幼児期における感情の機能的な発達的検討として積み木課題によるモチベーションの実験的検討はその成果を「同志社心理」誌に報告している。社会的認知、感情読み取り、援助行動の連関について幼児を対象に行った研究は、「道徳性発達研究」誌に報告している。 障害児における発達研究は、Bayley Scalesを使用した研究、また乳児期における発達に対する自己移動の重要性に関して「Cerebral palsy in infancy and early childhood」に報告をしており、おおむね順調に研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では乳児の移動経験に焦点をあてムービングルーム、バーチャルムービングルームを使用した斜面や深みでの恐れ感情と対処、AB課題を応用した空間探索課題などを使用した空間認知能力、共同注意などについて基礎的な機序を検討している。また、移動経験を乳児用電気車(PMD)により“豊富化”する手法を用い、認知、感情機能の促進効果を検討をしている。 これらの研究は、今後、一層の進展を計画している。まず、3次元の立体刺激を提示し、馴化手法を使用して認知能力を測定するFE課題装置による実験的検討を自己移動経験との関連で検討している。また、バーチャルムービングルームによる空間刺激、共同注意、FEなどのPMDによる自己移動豊富化訓練による効果を継続して検討を進める。さらに、社会的な場面での検討として幼児期における保育場面や交通場面での認知と感情、そしてそれらと行動の関連について実験的に検討を進める。 さらに、障害児における社会性発達を認知、感情、行動レベルから検討する。 本年は海外共同研究者を招へいし、研究のレベルアップを図る打ち合わせや研究に関する講演などを実施することも計画に含まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用するPMDの整備実施が、次年度にまたがり、支出が翌年に繰り越されることとなったことが第一の要因となった。第二に分担研究者の1名が国外研修となり、研究費の使用が抑制された。第三に予定していた国際学会への参加に、たまたま学内資金が使用できたこと、海外研究者の招へいが当人の膝の外科手術のため、翌年に延期された。以上が使用額の繰り越し要因となった。 第一の点について、現在、PMDの整備を進めており、翌年度から使用が可能になる。第二の点について、分担研究者が帰国し、海外での研究蓄積をもとに一層の活躍が期待できる。第三の点について、海外研究者の招へいは翌年の秋に予定されている。以上のように、繰越額は翌年の研究実施において有効に使用されることとなる。
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