研究課題
平成26年度は、事後対応プログラムの分析、既に実施済みの調査(質問紙調査、インタビュー調査)による危機時の教師の体験の明確化と支援プログラム評価、予防プログラムの開発・試行実施・効果検証、研修プログラム開発を行い,成果については国際学校心理学会(ISPA),日本心理臨床学会、日本教育心理学会、日本学校心理学会等で発表した。1 事後対応プログラム分析・評価:昨年度に続き,福岡プログラムについて、プログラム支援を経験した教師インタビューをの複線径路等至性モデルによる分析例を蓄積した。また既に実施済み質問紙調査データの再分析により,支援プログラムの効果を検討した。これらの結果については、計13件の学会発表を行った。前年度計画済みの臨床心理士調査を実施し,各地の事後対応プログラムや実施体制の実態と課題の量的質的把握を行った。2 予防プログラム開発・試行実施・効果検証:①~③の領域のプログラム開発・試行実施・効果検証を行い,計25件の学会発表を行った。―①心の減災教育プログラムは,前年度開発の小学生プログラムの効果検証を行うと共に中高生対象,成人対象プログラムの開発・試行実施を行った、②開発済みの自殺予防教育プログラムの学校現場への導入促進要因についての検討を行った、③開発・実施済みの一般型心理教育の長期的効果検証のためのフォローアップ調査結果を分析した。①では,呼吸法効力感が認知修正を経由して対人信頼感を高めること,②では教員研修を含むSC関与の重要性など,③では統制群と比しての自尊心、一部の社会的スキルの向上・維持が確認された。3 支援者養成プログラム開発:危機対応、自殺予防について、教師や臨床心理士対象プログラムを試行し、効果検証を行った。より実習的な内容の方が危機対応に関する見通しの向上,不安減に寄与していた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の実施母体となる複数の研究会活動は活発に継続しており,事後対応プログラム分析・検討,予防プログラム開発・試行実施・効果検証,支援者養成プログラム開発・試行実施ともに順調に進み,その成果を多くの学会発表の形でまとめることができた。事後対応プログラム及び,支援者養成について教育行政担当者への聴き取りが,年度内に実施できていないが,既に聴き取り内容の準備や所属大学での倫理審査は済ませており,早急に着手可能である。
平成27年度は,前年度に引き続き,1~3の各領域について,以下の研究を推進する。1 事後対応プログラムの評価・分析・改編:平成26年度に都道府県臨床心理士会所属の臨床心理士を対象に,支援の開始手順,提供される具体的なプログラムと効果(手応え),研修受講状況,現状の課題についての質問紙調査を行い,集計・分析に着手している。引き続き,結果の詳細な検討を行うとともに,事後支援の経験豊富な臨床心理士,教育行政担当者への聴き取り調査を行うことで事後プログラムの効果と課題を明らかにし,改編に向けての基礎資料を得る。危機時に臨床心理士チームの支援を経験することが教師に与える影響についての前向き研究(調査研究)の計画に着手し,年度内に実施する。これによって,効果検証の精度を上げる。2 予防・準備プログラム開発・効果検証と普及啓発:平成26年度までに開発・試行実施・効果検証を行って来た各種予防プログラムについて,プログラムの改編・精緻化を行うとともに,より幅広く普及啓発が可能になるために,プログラムのパッケージ化や実施者訓練のツールの開発を行う。3 支援者養成プログラム開発・効果検証・精緻化:事後対応の経験豊富な臨床心理士,教育行政担当者への聴き取り調査によって,危機時のそれぞれの役割や必要な知識・技能を明らかにする。また,平成26年度までに開発・試行実施・効果検証結果の分析を行い,両者から,対象別の研修(支援者養成)プログラムの精緻化を行う。
・全国臨床心理士会所属臨床心理士対象の質問紙調査の回収率が,当初予定より少なくなり,返送料が予定より少なくなった。また,結果の入力について,業者委託の予定であったが,短期雇用の範囲内で実施可能となったため,その費用が不要となった。・当初予定していた,事後対応の経験を豊富にもつ臨床心理士と教育行政担当者の聴き取り調査が今年度にずれこんだため,協力者謝金,調査担当者の旅費・宿泊費等が不要となった。
・早い段階で,臨床心理士及び教育行政担当者の調査計画を立案し,実施する。その際の協力者謝金,調査担当者の旅費・宿泊費等に充当する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (40件) 図書 (5件) 備考 (1件)
子どもの子心と学校臨床
巻: 第11号 ページ: 67-75
http://kokoro-gensai.educa.nagoya-u.ac.jp/wordpress/