研究課題/領域番号 |
25285193
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 佐枝子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (20456924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 自閉症スペクトラム / 広域表現型 |
研究概要 |
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder; ASD)の子どもを持つ養育者の自閉症広域表現型(Broad Autism Phenotype; BAP)の特性を抽出、検討することを目的に、予備分析として半構造化面接内容分析を行い、検査者とのやりとり場面の分析を行った。対象者は19名のASD児の父母であった。やりとりの特徴の分析において参照した自閉症診断に用いられる半構造化面接の下位項目を検討した結果、コミュニケーション領域で多数の人にスコアがついたものとして「相手に関する情報を要求するか否か」(63.2%)「協調された身ぶりや感情的な身ぶりが見られるか」(57.9%)があげられ、社会的相互作用領域では、「他人の感情についての共感を示すか否か」68.4%)、「自身に関する洞察」と「自身の感情を伝達するか否か」(63.2%)、「他者に多様な表情が向けられているか」(57.9%)などがあり、こういった側面においてやりとりの特徴がみられた。BAPとは自閉症様の特性と質的に類似する特性を有するものの、閾値下である場合に用いられる概念であり、1名を除いた18名は自閉症スペクトラム障害と判断される得点とはなっていない。その一方で、コミュニケーションや社会的相互作用において上記のような特徴を有することが明らかとなり、自身について情報発信する際や相手からの情報提供に対しての言語的・非言語的反応が乏しい傾向が示唆された。支援を行う際には、やりとりにおいてどのように自分に関する情報を発信するか、また相手から発信された情報の読み取り方について具体的に提示することが求められる。今後は自閉症診断に用いられる半構造化面接だけでは拾いきれないBAPの特徴を抽出するために、修正版人格測定票改訂版(Modified Personality Assessment Schedule Revised; MPASR)など、BAPの人々の特徴を精査する面接法を臨床群と定型群に対して用いて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BAPの特徴の抽出に関する研究では予備分析として、仮説となる本邦におけるBAPの特徴を予備面接の分析から抽出し、あわせてMPASRの邦訳作業が終了したことから、本年度はそれを用いた面接調査を実施する体制が整っている。またASD児の養育者向けの子育てプログラムの施行に関する研究では、子どもの成長発達に必要な基本的信頼感を育むことに焦点を当てる必要性から、Circle of Security Parenting (CoSP)プログラムを選定し、ASD児の養育者向けに必要な工夫点を抽出し、実施に向けて準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
BAPの特徴の抽出に関する研究では、面接尺度MPASRおよび質問紙調査を臨床群、定型群に実施し、データ収集を進める。ASD児の養育者への支援プログラムについては、CoSPを臨床群と待機群を設定の上、効果測定を行うためにプログラムを試行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたよりも効率よく分析を進めることができたため、予算より少ない人件費で行う事ができた一方で、養育者のBAPを把握する上で質問紙や面接調査だけでなく、その他の客観的指標を導入して検討する必要性が生じたため。 BAPを持つ養育者の社会的認知場面の情緒判断時における人の眼球の動きを追跡・記録する機器を購入し、BAPを明らかにする上での客観的指標として使用する予定である。
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