研究課題/領域番号 |
25285193
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 佐枝子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (20456924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 自閉症スペクトラム / 広域表現型 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもを持つ養育者の自閉症広域表現型(Broad Autism Phenotype; BAP)の特性を抽出することを目的とした研究では、修正版人格測定票改訂版(Modified Personality Assessment Schedule Revised; MPASR)の臨床群への実施を開始するとともに、予備データの観察評定(PRS;Pragmatic Language Scale)分析を実施した。MPASRでは自己評定よりも情報提供者評定が高得点となり、BAP有のPRSでは“ぎこちない・不適切な表現”で得点がつく傾向が認められた。予備データにおけるBAPQ-JとPRSの関連分析では、BAPQ-Jの自己評定と他者評定ではそれぞれPRSとの相関に違いがみられ、本人自身のBAPの認識は、会話におけるぎこちなさや不適切な表現として反映されるのに対し、情報提供者は会話のキャッチボールなどやりとりの奇妙さにより、相手の融通の効かなさなから認識されることが示唆された。 次にASD児とその養育者との関係性構築を検討することを目的として、アタッチメント理論に基づいて開発されたCircle of Security Parenting(COSP)集団子育てプログラムを就学前後のASD児の養育者に施行し、その効果測定を行うための質問紙および親子遊び場面の行動観察をプログラム前後に実施した。本年度はCOS本部から許可を得てバックトランスレーション作業を行ったParent Feedback Questionnaire(PFQ)をあわせてプログラム評価に用いた。本年度は計8名に対し2時間セッション8回を実施した。BAPQ-Jにおける全体得点のカットオフ得点を超えた者は3名おり、PFQではプログラム全体評価として5.4(6段階評定)、子育てへのストレス軽減度は2.6(3段階評定)、子どもとの良好な関係性構築は2.9(4段階評定)であり、一定の効果が示唆された。関係性に関してはより長期的な経過を考慮する必要性が考えられる。来年度以降もCOSPを実施し、データ収集を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BAPの特性を抽出することを目的とした研究では、臨床群における予備データの観察評定分析から自己評定と他者評定の違いによるBAP特徴が抽出されたことから、今後のMPASR施行を通したBAP検討の方向性が導かれた。また、ASD児の養育者向けの子育てプログラム施行に関する研究では、量的分析ができるよう一定の被験者数を確保すべく継続してプログラムを実施していく体制が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
BAPの特性を抽出することを目的とした研究では、引き続き面接尺度MPASRおよび質問紙調査を実施し、データ収集を進める。また、ASD児の養育者向けの子育てプログラム施行に関する研究では、量的分析ができるよう一定の被験者数を確保すべく継続してプログラムを実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上、養育者のBAPおよびプログラムの効果を把握する上で、客観的指標を導入した検討する必要性が生じたため、前倒しで必要な物品を購入したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
COSPプログラム参加開始前後で、Tobii2グラスアイトラッカーを用いて社会的認知場面における人の眼球の動きを計測し、変化を解析する。
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