研究課題/領域番号 |
25285193
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 佐枝子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (20456924)
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研究分担者 |
榊原 久直 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (90756462)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 臨床心理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)児を持つ養育者に「安心感の輪」子育てプログラム(Circle of Security Parenting Program; COS-P)を実施することで、子どもの行動への理解及び養育者自身の心身状況に変化が見られるかを検討した。COS-P実施前後に質問紙に回答した31名の養育者のデータを解析した結果、子どもの行動を非活動的で一人を好むといった内向的側面としてとらえていた傾向が減少したとともに、子育て困難感の減少、乳児期の子どもの行動理解の促進が示唆され、加えて養育者自身のうつ傾向の改善が示唆された。ASD特性により養育者がとらえにくくなっていた子どものアタッチメント行動様式への理解が深まったことに伴い、子どもの行動のリフレーミングが示唆される。それに伴い、自身の子育てへの負担感やイライラといった困難感の減少とともに、自信につながったことが示唆される。 加えて、全31組の親子の中から、養育者に自閉症広域表現型(Broad Autism Phenotype; BAP)が見られる親子2組、子どもの知的障害の程度がより重く言語未出の親子2組、養育者にBAPは見られず子どもも言語的コミュニケーションが可能な親子2組をそれぞれ抽出し、実施前後に測定した親子の自由遊び場面のビデオデータを観察指標により分析した。サンプル数の少なさや、群ごとの行動の生起回数に変動が見られたため、統計的に有意な差が認められたたわけではなかったが、全般的に養育者が子どもや子どもの操作する物に視線を向ける行動は増加していた。子どもの行動を見ると知的障害の重い子どもを除いて、養育者や養育者の操作する物に視線を向ける行動は増加していた。加えて子どもが養育者に快の情動を示す行動も増加していた。このように養育者と子どもの非言語的コミュニケーションにおいてプログラムの効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後プログラムの効果検証を行うためのデータの蓄積が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
データ収集が終了し、今後は結果をもとに自閉症特性における広域表現型を考慮した養育者へのプログラム適用に必要な枠組みを提示すべく、最新の研究動向のレビューと合わせて精査し、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
育児休業により、データ解析作業が順延となったことから、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、データ解析、論文発表のための諸費用、投稿に向けた使用が見込まれる。
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