研究課題/領域番号 |
25285194
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
明智 龍男 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80281682)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不安 / がんサバイバー |
研究実績の概要 |
無作為に抽出した外来通院中の無再発乳がん患者317名を対象として、Concerns About Recurrence Scale (CARS)日本語版に加えて、Social Problem-Solving Inventory-Revised(SPSI-R)Short Formを施行してもらい、再発不安と個人の問題解決スキルの関連を検討した(尺度に関しては下記を参照)。その結果、患者の問題解決スキルは、全体的な再発脅威についての4項目に加え、すべての下位尺度と有意な関連を認め、良好な問題解決スキルが再発/転移の不安、恐怖の低さと関係することが示唆された。以上より、患者の問題解決スキルを改善するような介入が、再発/転移の不安、恐怖の緩和に有用である可能性が示唆された。 また、がんの診断後3年以上を経過している再発のないがんサバイバー30名程度を対象に、再発/転移の不安・恐怖を和らげるために有用だった対処法に関して面接調査を実施したが、結果に関しては現在解析中である。 (評価で用いた尺度) ・CARS:乳がん患者の再発/転移の不安、恐怖を評価するための30問から構成される自己記入式質問票である。全体的な再発脅威についての4項目に加え、下位尺度としては、将来の治療や生活、情緒的苦痛、身体的な健康に関連するHealth Worries、セクシュアリティ、生殖、女性らしさに関連するWomanhood Worries、役割に関連するRole Worries、死の脅威に関連するDeath Worriesがある。日本語版の妥当性は確認されている。 ・SPSI-R Short Form:問題解決スキルを測定するための25項目(ポジティブな問題志向、ネガティブな問題志向、合理的問題解決、衝動的/不注意型問題解決、回避型問題解決の5因子構造)から構成される自己記入式質問票である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた質的検討に関しては、結果を出せるまでにはいたらなかったが、その他は概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までに、がん患者の問題解決スキルの改善が、再発不安・脅威の軽減に有用である可能性を示唆してきた。また我々は、がん患者の精神症状緩和に資する構造化された問題解決療法(PST)プログラムを開発し、実地臨床で実施することに加え、予備的なパイロット研究でその有用性を示唆してきた。 来年度は、そのプログラム内容を基盤としたiPhone等の携帯端末を媒体として6-12セッション(最短6週間)で終了できる問題解決療法『かいけつアプリ』を開発することとする。『かいけつアプリ』は一般的な問題解決技法の6つのステップ(Step 1:問題を整理し明らかにするとき、Step 2: 目標を具体的にする、Step 3: 解決方法を考える、Step 4:よりよい解決方法を選ぶ、Step 5: 解決方法を実行する、Step 6:結果を評価する)から構成されるが、加えて、我々の臨床経験からも簡便で有用性が示されている行動活性化の要素も含んだプログラムとする予定である。別の研究で開発したスマートフォンを用いた認知行動療法と同様に、登場人物によるダイアログ形式で進み、セッションとセッションの間には課題が与えられる。課題には参加者の入力が必要になる。導入部分を除く各セッションは各課題をクリアすることで次のセッションに進むことができる。セッションおよび課題は参加者が自学自習し、これに要する時間はおおよそ週に30分であるが、定期的に研究事務局の支援者から簡単なメールによる支援を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPhone等の携帯端末使用した問題解決療法『かいけつアプリ』の開発費を捻出するため。
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次年度使用額の使用計画 |
iPhone等の携帯端末を使用した問題解決療法『かいけつアプリ』を開発する。
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