研究課題/領域番号 |
25285195
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
中島 聡美 福島県立医科大学, 放射線医学県民健康管理センター, 准教授 (20285753)
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研究分担者 |
白井 明美 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (00425696)
伊藤 正哉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 室長 (20510382)
小西 聖子 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (30251557)
山田 幸恵 東海大学, 文学部, 准教授 (30399480)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 複雑性悲嘆 / 認知行動療法 / 遺族ケア / オープントライアル / 無作為化比較試験 |
研究実績の概要 |
平成28年度は平成27年度に引き続き、複雑性悲嘆の認知行動療法(complicated grief treatment, CGT)(Shear et al., 2005)の適応性および有効性の検証を行った。成人の複雑性悲嘆患者を対象に、3施設(国立精神・神経医療研究センター病院、武蔵野大学心理臨床センター、国際医療福祉大学大学院青山心理相談室)で、単群での介入前後比較試験として実施した。主要評価は、複雑性悲嘆の重症度(ICG)とし、副次評価として抑うつ症状(BDI-Ⅱ)等を治療前、治療後、治療開始から28週後、40週後、64週後に評価した。実施にあたっては、すべての実施施設の倫理審査委員会の承認を得て、UMIN CTRに登録を行った(UMIN000002565)。 平成28年度末までに18例が登録し15例が治療を完遂し(脱落率16.7%)、64週後のフォロウアップ面接を終了した。治療後、10例(55.6%)が複雑性悲嘆の診断基準を満たさなくなった。治療前後において複雑性悲嘆症状および抑うつ症状に有意な改善が見られ、その結果は64週目まで維持された(線形混合モデル)。また、治療の効果量(Cohen’s d)は、ICG 1.8、BDI-Ⅱ 0.76であった。治療による重篤な有害事象は報告されなかった。CGTは、日本人の複雑性悲嘆遺族においても、複雑性悲嘆症状および抑うつ症状の改善に有効であり、かつ安全に施行できることが示された。 今年度は、CGTの普及のため、複雑性悲嘆療法ワークショップ(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター 2016年10月14日―15日)を開催するとともに、研修参加者に対して2例のスーパーバイズを行った。また、CGTオープントライアルの結果を踏まえ、プログラムの内容をより日本の臨床現場に適応できるように、開発者のShear博士を交えて検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
複雑性悲嘆の認知行動療法のオープントライアルについては、目標症例数の15例の治療およびフォロウアップアセスメントが終了し、現在結果を分析し、論文発表準備中である。このオープントライアルの結果を踏まえて、日本版CGT(J-CGT)プログラムを開発し、無作為化比較試験を行う予定であったが、研究代表者の所属が変更したため、国立精神・神経医療研究センターでの無作為化比較試験が困難となった。また、J-CGTについて、CGTと効果の差がないこと、またより実践しやすいかなどの検討を行う必要があると考え、まずJ-CGTの予備施行を実施するようになったため、無作為化試験の実施を延期した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度で、複雑性悲嘆療法(CGT)のオープントライアルが終了したので、そのデータをまとめ、学会および学術雑誌にて報告を行う。また、このオープントライアルの結果を踏まえて、日本の複雑性悲嘆患者および、日本の精神医療・心理療法の現場により適用しやすい形に修正し、日本版CGT(J-CGT)プログラムを現在開発している。プログラムの開発にあたり、治療マニュアルの改訂、マテリアルの作成、治療プロトコールの作成、治療者の育成、治療機関の確保を行必要がある。治療プログラムの開発にあたっては、平成28年度にCGTの開発者であるコロンビア大学のShear教授と綿密な打ち合わせを行った。 そのうえで今後は、まず、J-CGTが従来のCGTと同様の効果があり、かつより実践しやすいものであるかどうかを検証する必要があることから、J-CGTの効果について単群での前後比較試験で実証することとした。またこの研究では、首都圏だけでなく、関西、東北地域を入れることでより、広い実施可能性を検証することとした。 また、将来の無作為化比較試験の実施を踏まえて、被験者のリクルート体制、治療者の育成、スーパーバイズ体制を整備していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は米国で開発された複雑性悲嘆治療(CGT)を日本人遺族に適用し、予備研究実施後、無作為化比較試験(RCT)を行う予定であったが、予備研究終了後、研究代表者が職場を異動したため、新たなフィールド確保が必要となり、研究が遅延したことと、予備研究の結果からCGTを日本人向けに改変し、その検証を行った上でRCTを行う方向に研究計画が変更されたため、補助事業の延長を希望するものである。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに終了したCGTのオープントライアルの結果を英文投稿するための英文校正費用および学会発表費用、今後のJ-CGTの予備研究の研究計画、マニュアルの作成のため、共同研究者と討議するための交通費、プログラム開発に伴う研究補助業務者への労務費に使用予定である。
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