研究課題/領域番号 |
25285204
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
金沢 創 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (80337691)
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研究分担者 |
作田 亮一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40254974)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実験系心理学 |
研究概要 |
本研究では、10 代前半の摂食障害者の知覚・認知的特徴を、実験的に解明することを試みることを計画していた。一般的には、摂食障害とは16 歳から24 歳の女性を中心に、ダイエット文化などの社会的影響によって発症する心の病であると考えられている。しかし近年、むしろ認知の偏りやそれを生み出す脳科学的な要因の関与が報告されるようになってきており(Chowdhury et al., 2003;Jáuregui-Lobera, 2011)、10 代前半での発症も急増している現状がある。本研究では摂食障害を、認知的要因の偏りをスタートポイントとして社会的要因をきっかけに生じる「発達的な障害」と捉え、この認知の偏りとその脳科学的な根拠を、顔認知課題を中心とする様々な実験心理学的な手法を駆使して明らかにしていくことを計画した。 上記の目的を達するため、本研究では、摂食障害を含めた発達障害児全般の脳活動をNIRSを用いて検討することを進めてきた。具体的には、本研究室において乳児を対象に実施してきた顔認知課題を用いて、これと同じ課題を摂食障害者に適用することを行っている。具体的には、自己顔を他者顔との比較で用い、摂食障害者の側頭葉の活動を計測することに成功した。また、表情認知課題を用いて、摂食障害直後の表情カテゴリーの乱れを明らかにしてきた。これらの成果は、学会発表や研究会などの検討へて、現在論文化への作業が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在、摂食障害者を対象に、表情認知、注意の切り替え課題などを用いて、定型発達群に比べ、有意な違いが明らかになりつつある。本研究プロジェクトの最終目標が、10代前半の摂食障害者が、通常の20歳前後の摂食障害と異なっていることを明らかにすることである。特に、前者と自閉症との関連を検討し、最終的には両者の脳活動による識別可能となるような指標を明らかにすることが目標である。現在、この指標についての実験的検討がなされている段階であり、自己顔認知や表情カテゴリーなど、いくつかの有望な指標が明らかとなっている。今後、分担研究者の病院において、大規模なデータ取得による指標の標準化をめざしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後必要なことは、データ指標の妥当性を、摂食障害者群で検討していくことである。特に自閉症との関連が疑われる10代前半の摂食障害者と、通常の摂食障害者の識別可能な客観的・脳科学的指標の確率が求められる。この指標の妥当性を明らかにするには、自閉症グループにおける顔刺激に対するNIRSを用いた脳活動の検討や、同年代の定型発達群における同様の指標の確率が急務となる。また、発達的な脳活動の指標を、より基礎的に検討していくには、乳児におけるNIRSを用いた脳活動もあわせて考慮していく必要があるだろう。現在、分担者の病院において、1つの検査項目として、顔認知刺激に対するNIRSを用いた脳活動の計測を、大規模に実施する計画が進んでいる。NIRSは医療現場において、簡便に診断に用いることができる脳活動の指標であり、今後、保険点数化なども見据えた研究が求められる。この目標を達成するため、引き続き摂食障害者、自閉症・ADHDなどの発達障害者、定型発達者、の各グループにおけるNIRSによる脳活動計測データの収集に努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画は、病院が主なフィールドであり、病院での状況に左右される点が主な理由である。具体的には、摂食障害群は、病院であることもあり簡単に被験者を確保できるが、逆に健常コントロール群の実験が遅れてしまったことがある。実験設備や装置などは、病院での実験群と同じ条件でコントール実験を行わねばならない点も問題を若干難しくした。 本年は、病院を離れ、大学施設で病院とできるだけ同じ条件でのコントロール実験を試みていきたい。その際、注意機能や顔認知のスコアなどを指標に実験を行っていく。あわせて、顔認知機能の発達的な側面も、定型発達群のデータとして収集していく予定である。
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