本研究では、運動視における環境光と加齢の効果を実験的に調べることを目的とした。先行刺激により後続のテスト刺激の見え方が変わる視覚運動プライミングは、錐体と桿体が同時に機能する薄明視や環境座標において消失することを見出した。錯視の消失は若年層では顕著であったが、加齢と共にこの傾向は弱まった。その一方で、中心興奮-周辺抑制拮抗型メカニズムがもたらす空間抑制効果に関しては、薄明視において全般的にその効果が弱まると同時に、明所視と異なり加齢に特有の効果はみられなかった。以上の実験結果から、運動視における加齢の効果は錐体と桿体が相互作用するレベルにおいて影響を及ぼしていると結論づけられる。
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