研究課題/領域番号 |
25285212
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70222411)
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研究分担者 |
岡田 彩子 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (10425449)
佐伯 知子 大阪総合保育大学, 児童保育学部, 講師 (90517210)
柴原 真知子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40625068)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療専門職 / 国際情報交換:英国 / 医学教育 / 看護師教育 / キャリア形成 / 男女共同参画(ジェンダー) / 生涯学習・教育 / 専門職教育 |
研究概要 |
本研究は、医療専門職の女性、主に女性医師と女性看護師の生涯を通じたキャリアの形成・継続・発展とその養成上の諸問題を歴史的・実践的・国際的視点から多面的に検討することを通して、女性医療専門職をめぐる現代的課題への示唆と展望を得ようとする総合的研究である。近年、社会問題化した女性医師の「医療現場からの撤退」、新卒女性看護師の職場定着率の低迷などを背景に、キャリア形成、キャリア継続やワークライフバランス等への対応の必要性が認識されてきた。本研究ではこの動向を受け、世界初の女性医師E.Blackwell、および看護師の専門職化の主導者F.Nightingaleを輩出した英国と日本との、医師・看護師の職業的発達、キャリア形成の現状と実践的課題などの多面的な比較検討から、「生涯キャリア」への示唆と展望を得ることを目指している。 初年度は主に、6回の研究打ち合わせ会議・研究会、英国での実態調査、国内外での資料・情報収集を行った。2013年8月の英国調査では、英国医事委員会(GMC)、女性医師会、王立看護カレッジなど関連機関の訪問・ヒアリング調査に加え、女性医師関連で4人の女性にインタビュー調査を行った。また2014年3月には研究分担者1名が補足調査のために渡英し、5人の女性医師のインタビュー機会を得た。これらの成果を通して、英国の医療界では現在、GP(医療の窓口となる家庭医)において女性医師の目覚しい増加が見られ、柔軟な就労システムにより、多くの女性医師が医業を出産・育児と両立できている事実を確認した。これらを手がかりに、日英の医療専門職、特に女性医師の位置づけの違いと諸要因に関わる一定の共通認識と論点が得られ、今後の比較研究上の諸課題が明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、女性医師および女性看護師の現状と課題について、日本国内では今後の調査研究に肝要なリソースパーソンや調査協力者に一定の見通しが得られており、英国調査などを経る中で、英国でのネットワークも確保でき始めている。研究代表者の研究経緯から、英国に関しては医師の方が先行しているが、看護師についても研究分担者の多方面でのアプローチから、調査協力者の見通しが立ってきている。 第二に、英国調査(補足調査を含む)の成果が大きく、その際に入手した資料やインタビュー記録、関連情報などが本研究の展開に重要な役割を果たしており、今後の進展への示唆も多大である。 第三に、研究打合せ会議・研究会における英国調査の記録などを精査する作業の中で、本研究の本格的展開に向けた議論が深まり、研究代表者と研究分担者における、生涯教育学、医学教育学、看護教育学、保育学という4つの研究領域を足場に、認識や論点の共有に留まらない、女性専門職の生涯キャリアに関する実践的課題についての議論が行えるようになっている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はまず、研究打合わせ会議・研究会において、日英と医師・看護師という比較のための2つの視点を組み込んだ研究枠組を構築しつつ、国内でのインタビュー調査を開始する。先行する女性医師研究については、英国のインタビュー成果とその検討を踏まえつつ、日本国内の現状と課題を背景に、生涯的なキャリアという視野において女性医師へのインタビューを行う。看護師については、英国での情報収集を強化し、日英女性看護師を比較研究する視点から、次年度は主に国内の看護師のインタビューを実施する予定である。 医療職自身を対象とする、個々のキャリアに関わる調査研究という性格から、本研究は、研究分担者が所属する兵庫県立大学の倫理審査委員会に申請し、倫理的見地からの審査・承認を得る予定であり、7月初旬の審査に向けて、書類などの準備作業に取り組み始めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月に予定していた国内予備調査が年度末の多忙なスケジュールの中で実現できなかったこと、購入予定の洋書が刊行延期のために入手できなかったことによる。 次年度の研究・打ち合わせ会議において、予備調査の方針と図書購入計画を再検討した上で、国内予備調査および洋書購入に使用する。
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