研究課題/領域番号 |
25285221
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
橋本 紀子 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (20138530)
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研究分担者 |
井上 惠美子 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (80259316)
田代 美江子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40297049)
艮 香織 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (10459224)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育学 / 学校教育 / 教育内容 / ジェンダー平等 / セクシュアリティ |
研究概要 |
本研究は、<性>に関する教育の視点からの教科書分析とジェンダー/セクシュアリティ形成に関する世代別調査を通じて、学校における教育内容・教育課程の課題について検討することを目的としている。 平成25年度は以下のことを実施した。 1)学習指導要領の変遷による世代わけの精緻化(第1課題)。2)各年の合計特殊出生率・出生数、高校卒業者数、高校および大学への進学率などの高校生に関連する統計データを収集・整理し、各世代の背景を把握(第1課題)。3)日本国内の保健、家庭科、生物およびその関連科目の教科書を収集し、その内容の歴史的変遷を学習指導要領の変遷と照らし合わせながら検討(第1課題)。4)1および2で明らかにした世代ごとの特徴を踏まえたうえでの、世代別インタビュー調査(第3課題)。5)欧州調査(フィンランド・フランス・ドイツ)における、現地での教科書の収集および関係者へのインタビュー(第2課題)。 特に4)における世代別調査では、各世代の性・セクシュアリティ意識の特徴を捉えるための質問項目を検討し30名ほどの対象者にインタビューを行った。これにより、世代の違い以外にも、地域や家庭環境といった属性によって性・セクシュアリティ意識が大きく異なることが明らかになり、新たに検討するべき分析視角を確認することができた。またこの調査は平成26年度に実施予定の質問紙調査(第4課題)の内容を検討するための予備調査としての役割も果たしている。 また、5)におけるインタビューでは現地の中学校・高等学校の教員、性教育関連施設の職員、行政の教育関連部局の職員へのインタビューを行い、それらの国で性・セクシュアリティに関する教育がどのように行われているかを確認することができた。 上記の調査、解析および総合的な検討については、平成26年度も継続して実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1課題(国内教科書の分析)については、平成25年度のうちに学習指導要領の改訂の時期とその内容の変遷、および教科書等の資料の収集・整理を概ね終えているため、詳細の確認および分析に取り掛かることができる。 第2課題(海外調査)については、平成25年度に予定していた調査を実施し、調査対象国の教育の状況について概観できており、報告書を作成した。また、収集した教科書等の資料の一部は既に翻訳済みであるため、26年度は日本国内の教科書と併せて比較分析に取り掛かることができる。 第3課題(世代別インタビュー)については、当初3年間で60名の調査を予定しており、現在その半数である30名ほどに対する調査が実施済みである。さらに26年度は、既に10名弱の対象者へのインタビュー実施の予定が決まっており、順調な進展といえるだろう。また、平成25年度に既に実施した対象者については調査データの整理も概ね終えている。 以上3つの課題に関して、その大まかな特徴を捉えることが出来ており、その成果を踏まえて第4課題(高校生・大学生質問紙調査)の質問紙で取り扱う項目の検討が進められるものと考えている。またそれと同時に、対象者(対象校)の選定および交渉などの準備に着手することができる。 以上のことから研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
課題1の日本の教科書分析については、保健、理科、家庭科を中心に、性・セクシュアリティおよびジェンダー平等の視点がどのように組み込まれているのかを、昨年度に整理した学習指導要領の変遷と照らし合わせながら詳細に分析していく。 課題2については、それぞれ1週間程度の予定で、オーストラリアおよび韓国への海外調査を行い、使用されているジェンダーおよびセクシュアリティ関連の内容を扱った科目の教科書の収集を行う。また現地の教員や性教育関連部署の担当者と面接し、その国で行われている性・セクシュアリティおよびジェンダーに関する教育の現状を把握する。また昨年度に収集した外国の教科書の翻訳作業および分析、さらに課題1と関連して日本の教科書との比較分析を行っていく。 課題3の世代別調査においては、継続してインタビュー調査を行う。昨年度に得たデータは普通科高校を卒業した対象者が多く、その属性に偏りが見られる。本年度はその偏りを修正するため職業高校を卒業した対象者に協力を依頼する。 課題4では高校生・大学生を対象とした質問紙調査を実施する。課題1~3で明らかにしてきた事柄を踏まえて質問紙の項目を検討したうえで、高校生・大学生各400 名規模の調査を実施する。大学生調査は、所属大学や関係のある他大学の研究者に協力を依頼して実施する。高校生調査は、学校長宛に手紙・電話・面談などで依頼するなどして協力校を探すが、学校間の格差(学力差)によるバイアスが結果に強く影響することが予想されるため、なるべく公正なサンプリングになるように慎重に対象校を選定する。回収状況によっては、分析の際に学年・地域・性などを考慮した事後ウエイトをかけるなどの工夫をする。 また平成26年度は上記で得られた成果を論文の投稿や学会発表などの形で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
課題2の海外調査において、スケジュールの都合によって当初予定していたよりも参加人数が減り、少数精鋭での調査となった。また、3つの国を効率的にまわり、資料の収集および調査を済ませることができたため、次年度使用額が生じた。 課題3の世代別インタビュー調査において、当初は日本の各地域出身者へのヒアリングを行うため出張費を多く使う予定であった。しかし関東圏には多くの地方出身者がおり、その者たちへのインタビューを行うことで様々な地域出身の対象者を集めることができたため、予定よりも出張費が使用されず、次年度使用額が生じた。 課題3の世代別インタビュー調査では、初年度は上記で説明したとおり、関東圏に住む地方出身者を対象とした調査を中心に行った。しかしこれまでに集めたデータから、関東圏在住の地方出身者と、生まれ育った地域に生涯住み続ける地方出身者では、彼らのもつ家族観・結婚観・セクシュアリティ観などの点で大きく異なるであろうということが明らかになりつつある。したがって、本年度は関東圏以外の地域で生活している対象者を中心とした調査を行っていく必要があり、その調査のための交通費、宿泊費として前年度の未使用分をあてることを計画している。
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