研究課題/領域番号 |
25285222
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 准教授 (40363296)
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研究分担者 |
本多 正人 国立教育政策研究所, その他部局等, 研究員 (90282623)
貞廣 斎子 千葉大学, 教育学部, 准教授 (80361400)
佐藤 博志 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 准教授 (80323228)
大野 裕己 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (60335403)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学校経営、学校マネジメント / 学校予算 / 学校財務 / 学校裁量 / スクールリーダー / 校長 / 教頭 / 学校事務職員 |
研究概要 |
平成25年度は当初の予定通り、学校マネジメント調査、自治体インタビュー調査を実施した(研究代表・分担者全員)。また学校コスト調査について、これまでの研究代表者(末冨)、研究分担者(本多)の蓄積をふまえより簡略でわかりやすい入力の方式を検討した。また海外調査のうち平成26年度前半に実施が予定されているオーストラリア調査についての文献研究とウェブでの現地情報収集と分析を実施した(佐藤)。くわえて既存の学校経営理論を学校予算・財務の視点から検証した。国内については研究協力者の田中真秀が、海外については研究協力者の内山絵美子が実施した。 学校マネジメント調査、自治体インタビュー調査の分析の現状は以下の通りである。校長、教頭、学校事務職員が学校予算・財務について学校マネジメントに有効であるという認識を持つかどうかは、以下の3つの要因の影響を受けている。1)自治体要因、2)非自治体要因(学校要因)、3)職要因。 1)自治体要因については、学校予算の節間組み換えや配分額の事前の把握、校長の予算執行権限などの学校の自由度によって、効果的な学校マネジメントが可能になるかどうかの認識が分かれる。 2)非自治体要因(学校要因)については、“協働”“同僚性”の有無が大きな影響を四ぼしている。単純に学校に自由度の大きい予算を配分するだけでなく、教職員間の学校マネジメント方針に関する合意や目標達成のためにお互いに刺激しあい助け合う教職員間の意識や行動が基盤として重要ということになる。 3)職要因については、校長、教頭、学校事務職員のポジションの違いに由来する回答傾向の違いが認められる。細かい校務を取り仕切る教頭と、日常の予算・財務を執行する学校事務職員の回答は類似する傾向にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り学校マネジメント調査、自治体調査を実施し、効果的な学校運営に資する学校予算・財務の望ましいあり方を見出すという研究目的を着実に達成しつつある。 また分析についても、学校マネジメントの研究者(大野・佐藤)と学校予算・財務の研究者(末冨・貞広・本多)の間で建設的な議論を行っており、平成25年度調査の分析を実施することができた。 また学校マネジメント調査を通じて、調査対象である教職員に対し意識向上という正のインパクトを与えたケースもあり、効果的な学校マネジメントのために学校予算・財務がいかにあるべきかについて、本研究で注目している視点が有効である可能性も示唆されている。具体的にはこれまで曖昧にされてき学校のマネジメントサイクルへの予算・財務の位置づけや校長・教頭との協働や、教職員への意識喚起等による同僚性の向上等が、有効な条件として注目できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究実績をふまえ次のように研究を推進する。 (1)調査・分析フレームの洗練:「研究実績の概要」に述べたように平成25年度の調査・分析を通じて3つの要因を見出した。この中でとくに職要因については学校マネジメントの活性化に対して、それぞれの職が予算・財務面で発揮するリーダーシップの違いを見出していく必要がある。 また、教頭と学校事務職員の役割分担が明確かどうか、教科主任(教育活動)と学校事務職員との連携、誰が教科予算を決めるか、予算を可視化しているのは誰か等の視点に注目した学校マネジメント調査を実施したい。自治体調査では、こうした職毎のリーダーシップの発揮を可能にするような校務分掌やマネジメントに関する指導や研修が行われているかどうかも検討したい。 (2)学校マネジメント調査、自治体調査の継続実施、学校コスト調査の実施:平成25年度に実施した学校マネジメント調査、自治体調査に加えて学校コスト調査を実施する。学校ごとのフルコストと詳細な内訳を把握することで、効果的な学校運営のための学校予算の計画や執行のあり方についての分析も行う。 (3)海外調査の実施:学校マネジメントに予算・財務が高い位置づけを有している諸外国(アメリカ、イギリス、オーストラリア)の調査を行う。調査に際しては国や地方政府による制度整備や評価基準およびその実態、学校レベルでの職別の予算・財務に関する職務やリーダーシップのあり方を訪問調査、文献調査等によって遂行する。平成26年度はオーストラリア、イギリス調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
学校マネジメント調査および自治体インタビュー調査に要する経費が、対象自治体の協力で効率化できたため当初予算よりも少額の国内旅費となった。また研究代表者の末冨が妊娠中であったため体調が不安定であり当初予定より少人数での調査となった場合がありこれも次年度使用額の増加の要因となった。 平成26年度は海外調査(オーストラリア、イギリス)を予定しているので、その充実のための資料収集および国内の学校マネジメント調査、学校コスト調査、自治体調査のきめ細かい実施のための旅費としての使用に充てて行く計画である。
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