研究課題/領域番号 |
25285225
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小方 直幸 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20314776)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大学教育 / 組織的実践 / 小学校教員養成 |
研究実績の概要 |
本研究は、大学教育を取り巻く文脈が変化し重要性が高まっているにもかかわらず、研究としては確立途上にある大学教育の組織的実践に着目し、教育学部を事例として、そのメカニズムを解明することを目的としている。 本目的を達成するために、今年度は①小学校教員養成の組織的実践をめぐる政策動向を整理しつつ、②小学校教員養成に参入する大学・学部特性に関するマクロ分析、③小学校教員養成をめぐる専門性や独自性に関わる全国調査の分析、③国私立大学への訪問調査による事例考察、④個別大学における長期的な小学校教員養成の取組にみるプログラムと組織の変遷の分析、を実施した。 ②ついては、免許法や定員抑制廃止と行った政策動向の影響を強く受けつつ、小規模で選抜性が中程度で非研究大学からの参入が多いこと、③については、小学校教員養成をめぐる教育組織や教育課程が多様化する一方で、それが小学校教員養成の専門性・独自性の周辺の肥大化を助長しているだけで、異なる専門性を持つ教員の協働により、領域横断的に創造されているものからはかなり距離があり、専門性・独自性は曖昧であること、④については、小学校教員養成に大学・学部の目的が特化していたとしても、教育組織、教育課程、教育実践を組織的実践と貫くことには困難が伴っており、個々の教員の独自性や自律性が、目指すべき教員像が共有されている中で発揮されることと、それが欠落した中で担保されているのとでは、大きく意味合いが異なること、がそれぞれ明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の期間は3年であり、1年目は連携研究者との間での問題共有と基本的なデータ袖手に努め、2年目にあたる今年度は、教育の組織的実践をめぐり、小学校教員養成という限定的な対象ながら、マクロ、プロセス、ミクロという重層的な視点から、データ分析、資料分析、訪問調査を実施、大学を分析対象とした教育の組織的実践の現状と課題については、概ね明らかにできたと考えている。後述するように、一定の研究成果として公表も行えており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのアプローチは、小学校教員の供給者である大学サイドに着目したものであり、横断型の教育組織や教育実践の実態は把握できたものの、それに対する需用者である小学校の現場の動向の把握には至っていない。大学サイドの取組や認識が、現場の状況とどこまで合致し、また齟齬を来しているかが明らかにならなければ、横断型の教育組織や教育実践の総合的な考察、それを踏まえた改善方策の提示をすることは難しい。そのため、最終年度では、これまで着目してこなかった需用者側を取り上げ、小学校教員の日々の実践と、教科間の関係性について明らかに、3年間の総括を行う予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
教育現場を対象とした考察を行うためには、大学を対象とした分析・考察について研究成果をまとめておく必要があり、それに注力したことと、最終年度の調査に向けた予備調査を実施する予定であったが、その費用を次年度に回すことで、より大規模な調査が実施可能となるため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
現場の小学校教員が、大学では必ずしも行われていない教科をまたぐ教育をどのように捉えており、また日々の実践で教科間の関係をどう捉えながら教育実践を行っているか、その事実や背景に関する大規模な調査を実施する予定でいる。
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