大学教育の組織的実践の事例考察として取り上げた小学校教員養成に関して、これまで実施してきた供給サイドアプローチである、小学校教員養成課程認定校の研究、小学校教員養成プログラムの研究、小学校教員養成課程を持つ大学の歴史的なプログラム展開の研究を踏まえ、最終年度は需要サイドアプローチとして、小学校教員の教育実践に関わる調査を実施した。具体的には、全国の小学校1020校をランダムに抽出し、1校あたり4人(教務主任+低・中・高学年担当)配布を依頼した。回収数2288票、回収率56.1%だった。 調査の狙いは、①教科縦断性:教科ごとの実践状況を把握、②一人前(即戦力)とは:大学での学習、経験、就任後の研修の関係、③小学校教員養成プログラムの行方:小学校特化の学士課程や大学院プログラムは必要性の検討、④「得意科目構築」主義の功罪:現行のゼミ制度や就業後の研修制度の再考、⑤「深い専門→汎用性に連結」主義の功罪:規範と現実、の5点である。 教員養成に関しては従来、教科別ないし学校種を問わない議論が中心であり、大学は教科ピーク制と教育学・心理学の並列という組織形態をとり、1教科に強くなることが重要という就任後の研修・風土に加え、中・高等学校教員養成の視点が優先される傾向(特に小中連携)がある中で、所属ゼミの教科には自信・意欲持ち意欲的に取り組めている一方で、就業後の経験・研修が、複数教科に自信・意欲持つ方向に機能しておらず、当初から小学校教員を希望する者に適した教員組織として大学教育が実践されているとは必ずしもいえない状況であることが、調査から明らかとなった。
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