研究課題/領域番号 |
25285234
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西島 央 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (00311639)
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研究分担者 |
矢野 博之 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (40365052)
藤田 武志 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70324019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 部活動 / 中学校 / へき地 / スポーツ・芸術活動 / 教育格差 / 中学校教員対象質問紙調査 / ドイツのスポーツ団体 |
研究実績の概要 |
中学生のスポーツ・芸術活動に関する地域格差を、部活動を通して明らかにすることを目的とする本研究では、当初は、東京都や鹿児島県など5都県を中心に、教育委員会や中体連等対象のインタビュー調査や、中学校教員と中学生対象の質問紙調査を行う予定だった。実際には、この研究にとりかかる段階で、鹿児島県中体連より、中学生の部活動への関わり方について調査をしてほしいとの依頼を受けたことをきっかけに、調査計画を部分的に変更して、中体連の協力を得て、離島型のへき地のある長崎県と鹿児島県、山間型のへき地のある宮崎県を調査地として、中学生や教員を対象に見学・インタビュー調査と質問紙調査を行っていくこととした。 平成26年度は、以上のように変更した研究計画に基づく中学校教員対象の質問紙調査と、当初より予定していたドイツの地域スポーツ団体の見学・インタビュー調査を行った。 中学校教員対象の質問紙調査は、上記3県の公立中学校の管理職及び教諭対象に行った。その結果、①学校規模により部活動の設置数には非常に大きな違いがあること、②各部活動の日々の活動状況では、地域差や学校規模差による大きな違いはみられないこと、③大会やコンクールへの参加に関して、移動時間や経費などの面で地域による負担感の違いがみられること、④小学生時代の経験などの連続性はへき地の方が高いことなどがわかった。以上の知見から、へき地小規模中学校では、中学生に対して多様なスポーツ・芸術の機会を提供することはできないが、都市部と比べて不十分な環境にあるとはいえない面があることがうかがえた。 ドイツの地域スポーツ団体は、日本の総合型地域スポーツクラブの先行事例として見学し、生涯にわたるスポーツ環境が提供できるしくみとして評価できる一方、子どもがその環境を享受できるかどうかには、家庭の経済環境や親の嗜好性の影響がある可能性がうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には、長崎県・宮崎県・鹿児島県の公立中学校の管理職及び教諭対象に郵送法による質問紙調査を行った。前年度より3県の中体連の先生方の協力を得て、先生方から各県の現状や課題をうかがったり、現地の小規模中学校での聞き取り調査を行ったりしてきた成果と、平成25年度に実施した長崎県・宮崎県の中学生対象の質問紙調査の知見をふまえて質問項目を作成した結果、全体の回収率は40%にも上り、とくにへき地の中学校からの回答を多く得られた。 まだ詳細な分析にはとりかかったところではあるが、概要を整理しているだけでも、従来は量的に捉えられてはいなかった中学校部活動の地域による違いや学校規模による違いがずいぶんはっきり見えてきている。 また、ドイツのスポーツ団体の見学・インタビュー調査は、通訳を依頼した方(ミュンヘン大学講師)が、こちらの希望する適切なスポーツ団体を調査・紹介してくださったおかげで、よくある海外視察で表面をなぞっただけの情報収集に留まらず、ドイツでの課題にも切り込むことができた。 このように、平成26年度に予定していた2つの調査は、いずれもかなりいい成果を上げられる充実した内容のものになったと考えている。その一方で、いずれの調査の成果も、まだデータを蒐集して整理し始めたところで、一定の学術的な成果として発表できるところまで仕上げることはできなかったので、「おおむね順調に進展している」という達成度の評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、今年度の研究課題と同時に、3年間の調査期間のまとめを行い、必要に応じて、新たな研究課題を立案して科研費への応募につないでいくことを目指している。 今年度の研究課題としては、平成25年度に実施した中学生対象の質問紙調査を、平成26年度に実施した中学校教員対象の質問紙調査の成果もふまえつつ改訂して、へき地の中学生のスポーツ・芸術活動の実態とその背景に迫れるような質問紙調査を実施することである。鹿児島県中体連の協力を得て、鹿児島県の離島部等の中学校を中心に実施して、一定の成果を上げられるようにしたい。 その成果に加えて、過去2年間の成果を合わせて、日本の中学生のスポーツ・芸術活動の地域格差の特徴と背景を明らかにし、ドイツでのスポーツ団体調査も参考に、地域格差解消に向けた今後への課題を示せるように知見をまとめていくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、当初、5都県を中心に、平成25年度に教育委員会や中体連対象の調査、26年度に中学校教員対象の調査とドイツのスポーツ団体調査、27年度に中学生対象の調査を行う予定であったが、鹿児島県中体連の依頼を受けて、一部計画を変更し、25年度に長崎県と宮崎県で中学生対象の中規模な質問紙調査、26年度に長崎県・宮崎県・鹿児島県で中学校教員対象の調査、27年度に鹿児島県で中学生対象の大規模な質問紙調査を行うこととした。 そのため、25年度の調査対象と方法が変わって、使用予定額が少なくなった分、27年度に大規模質問紙調査が行えるように、25年度と26年度は計画的に執行し、次年度使用額が残るようにしてきた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、上記のとおり、鹿児島県で中学生対象の大規模調査を行う予定である。また、より質の高い質問紙をつくるためには、事前の現地調査をていねいに行う必要があることを、過去2年間の調査より実感しており、次年度使用額として使えることになった額は、質問紙調査の印刷費やデータ入力費及び事前の現地調査の旅費に充てることを検討している。
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