研究課題/領域番号 |
25285239
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
吉田 文 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10221475)
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研究分担者 |
村澤 昌崇 広島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00284224)
濱中 淳子 独立行政法人大学入試センター, その他部局等, 准教授 (00361600)
二宮 祐 日本工業大学, 工学部, 講師 (20511968)
田中 正弘 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (30423362)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会科学系大学院 / 労働市場 / 中国 |
研究実績の概要 |
2014年度は、日本の社会科学系大学院修士課程担当教員を対象に実施したアンケート調査を分析し、2014年度日本高等教育学会課題研究、同年度日本教育社会学会大会において口頭発表を行った。社会科学系大学院修士課程は1990年以降増加し、また2003年の専門職大学院の制度化により専門職大学院というカテゴリーにおいても増加しているが、新設の大学院では、学生の資質の低さや準備不足を問題に指摘する教員が多いものの、そうした学生に対する教育方法は、従来通りのアカデミックな研究に依拠しており、両者に齟齬が生じていることが明らかになった。 また、教員自身はそうしなかでも修士課程において学生は能力を伸ばすと認識しているが、それに対して企業の評価が低いことを問題にしていた。教員の学生に対するまなざしは、学術研究という観点からすれば不足感を感じているが、修士課程の教育の一定の効用は認めており、しかし、それを企業が認めていないことを問題とするといった錯綜が見られる。 当該年度は、これと並行して中国における大学院の調査を実施したが、中国では、学部段階の大学よりもランクが上の大学院をめざすというリベンジの意味をもって、大学院進学熱がヒートアップしている。大学進学の受験勉強には熱心だが、大学院での学習意欲はさほどなく、大学院進学とともによりよい就職を目指した活動をはじめる者が多いこと、しかしながら、政府が推進している就職者用の2年制の専門職大学院への進学よりは、博士課程につながっている3年制の学術大学院への進学を目指すという、ステータスを目指した進学行動が生じていることが明らかになった。 こうした日中の差異が生じる背景の1つには、労働市場における大学院修了者の処遇の問題があり、日本と異なり、中国では学歴取得と処遇との関係が形成されていることが、大学院進学熱をあおっているとみることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度に実施した社会科学系大学院修士課程担当教員の調査を分析、学会発表を行った。また、当初予定の企業のヒアリングに関しては、日本経営協会を通じて、その傘下の企業の人事担当部長および執行役員に対して、文系の大学院修士課程修了者の採用に関する方針やその背後にある企業の考え方についてヒアリングを行った。加えて、企業の採用担当者に対するwebアンケート調査を実施し、企業の採用行動における大学院修了者に対する見方を分析し、論文執筆を行った。 日本との対比を目的として、2014年度は中国において社会科学系大学院のおかれた状況に関してヒアリングを行い、かつ、大学院生に関するデータを収集し、その分析を行った。 当初は、中国と並行してアメリカでも調査を実施することを計画していたが、予算の関係で、2014年度は中国に絞って調査を実施し、アメリカ調査は2015年度に回すことにした。 これらの点で、計画はおおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
日本における大学院終了者の社会的処遇を、中国やアメリカと比較するという目的で行っている本研究であるが、残されたのはアメリカ調査であり、2015年度に実施を計画している。しかしながら、アメリカの場合、これまでの研究が一定程度あるため、オリジナルな研究をどこに求めるか、より綿密な計画が求められる。 また、これまで収集したデータをもとに、順次、学会発表、論文執筆を行っているが、それらをまとめて日本語、英語の書籍として出版することを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の分担金の残額があり、それが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
金額は、次年度の予定金額の1%未満と少額であるため、それを特定の使途に利用することはせず、当初の計画にしたがってその範囲で利用する。
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