研究課題
本研究は、文系の大学院修了者が労働市場においてどのように評価されるのか、それを日・中・米の3か国の比較研究として実証的に明らかにすることを目的としている。その背後には、日本と比較して大学院の拡充が進んだ米、高等教育の拡大において後発の中国においては大学院の修了者の社会的評価が高いが、他方で、1990年代以降に大学院(とりわけ文系の大学院)を拡充した日本においては、大学院修士課程修了者の増加にもかかわらず労働市場における評価は低く、かつ、先行する理系の大学院修士課程修了者も、大学院のプレミアムをもって処遇されているとは言い難い状況が続いている。このような差異が生じるメカニズムを明らかにするために、本研究では、大学院教育―学生の資質や目的―労働市場における採用状況の3つの相互連関を分析の枠組みとし、3か国の状況について分析を行った。当該年度は、前年度に実施した中国調査の分析を進めるとともに、日本とのもう1つの比較の対象としたアメリカで調査を実施した。その結果、中国、アメリカ双方、大学院進学熱が高く、大学院は拡張傾向をみせており、中国は3年制の学術修士課程ではなく2年制の専門職修士課程の拡大を図っていること、アメリカは短期かつ職業との関連を明確にした教育内容をもつ修士課程への改革を図っていることが明らかになった。中国の場合は、政府が積極的に介入する形で改革を進め、アメリカの場合は、大学が改革に主体となっているという違いはあるものの、どちらも大学院修士課程を労働市場とのリンクを再構築し、関連を強固にしようとする改革ということができる。こうした両国の大学院修士課程の改革が、学生や労働市場からどのような評価を受けているかに関しては、いくつかの懸念材料があり長期的に見る必要があるものの、短期的には一定の効果をもたらしており、日本の大学院教育に対しての一定の示唆を得ることができる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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総合人間科学研究
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高度教養教育・学生支援機構紀要
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