研究課題
本年度は、知的障害者の運動機能に関わる実行制御特性を踏まえた運動機能の最適化支援を検討した。これまでの成果として、知的障害者の運動機能の問題に関して、①注意の持続機能の制約、②不必要な反応を抑える抑制機能の制約を考慮する必要性が明らかとなった。また運動機能の不安定さは、両者の関連のもとに生じると考えられた。そのため、知的障害者を対象として持続的注意課題を実施し、持続的注意と抑制機能の関連を明らかにすることを試みた。持続的注意の課題として、連続遂行課題を用いた。連続提示される刺激のうち、3割の低頻度刺激に反応することが基本的な内容だが、本研究では、低頻度刺激2種のうちの1種のみへの反応することを求める1/2条件および低頻度刺激3種のうちの2種にのみ反応することを求める2/3条件で課題を実施した。注意を持続させることについては、正反応の割合である正反応率の分析を通して、抑制制御については、非標的刺激に対する誤反応の割合であるフォルス・アラーム率の分析を通して検討した。なお、これらの機能の問題は知的障害の程度の影響を受けると考えられたため、知的障害の程度が相対的に重い群と軽い群に分けて分析を行った。まず知的障害の程度が重い群では、条件に関わらず知的障害の程度が軽い群よりも正反応率が低く、フォルス・アラーム率が高かった。また、正反応率については、知的障害の程度に関わらず条件間の違いがみられなかったが、フォルス・アラーム率については、知的障害の程度に関わらず標的数が増加する2/3課題において高かった。この結果は、①知的障害者の持続的注意は知的障害の程度の影響を受けるが、課題の複雑さの影響をあまり受けないこと、②抑制機能は課題の複雑さの影響を強く受けることを示していると考えられた。また知的障害者の運動機能の安定性は、課題の単純さ、指示の明確さによって保つことができると考えられた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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埼玉大学紀要 教育学部
巻: 66 ページ: 129-135