研究課題
平成26年度は磁性粒子の集合体と、そのモデルとなる金ナノ粒子の集合体の研究を進めた。金ナノ粒子の集合体形成のために2つのアプローチで表面リガンド分子の設計を行った。ひとつはすでに見いだしているフッ素化オリゴエチレングリコールを改良をおこない、もうひとつは疎水性-親水性のヤヌス粒子を合成を進めた。フッ素化オリゴエチレングリコールの先端に糖鎖を固定化すると今までは不可能であった直径30nm以上の粒子であっても自己集合することがわかった。またサイズの異なる2種類の粒子を混合することでそれらが相分離しながら凝集することを見いだした。例えば大きなサイズの磁性粒子(酸化鉄)と小さなサイズのフッ素化した金ナノ粒子を混合するとひとつの集合体として得られることが分かった。すなわちフッ素化した金ナノ粒子が磁性粒子を取り込む形で集合体を形成できることを意味している。これは不用意な磁性粒子集合体同士の凝集・沈殿を防ぐのに有用であると考えられる。もう一つの集合体作製のアプローチである疎水性-親水性のヤヌス粒子では、まず金ナノ粒子をアルキル鎖の短いチオール分子(親水面を形成)で一旦被覆し、その次にアルキル鎖の長い、パッキングしやすい分子を添加することで親水的な粒子の一部に疎水的な島が形成されヤヌス様の粒子が合成できることを見いだした。水中において疎水部が自己集合の駆動力となり、親水部が溶媒に露出することで安定な集合体ができることを期待した。実際に親水と疎水性分子がランダムに提示されている粒子に比較して、ヤヌス状粒子の凝集体は水中で沈殿しにくい特性を有していることが分かった。これらの知見も粒子集合体を形成させるだけでなく、溶液中で安定な集合体形成を促進するために重要である。このヤヌス粒子の合成と自己集合に関する成果は2015年の学術論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
磁性粒子の集合化はすでに確認できているため、おおむね順調と判断した。金属ナノ粒子の集合体で現在の課題は、その安定性とサイズ制御である。現在磁性粒子の集合化がフッ素化オリゴエチレングリコールで形成できることは確認できているが、その安定性が十分ではないため沈殿しやすいことが課題である。その解決と、電磁波による刺激応答が今後の進展に必要である。
今後はより安定なナノ粒子集合体形成のために電荷を持たせたリガンド分子の設計を行う予定である。粒子表面の電荷反発とフッ素分子間の疎溶媒相互作用によって安定な粒子集合体が形成できると考えている。特に水中においての安定な集合体形成は現在の課題であり、溶液中での分散性をより高める設計を進めていく。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 4件)
Langmuir
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