研究課題/領域番号 |
25286003
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辻 正治 九州大学, 炭素資源国際教育研究センター, 学術研究員 (30038608)
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研究分担者 |
吾郷 浩樹 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (10356355)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 複合ナノ微粒子 / コア・シェルナノ微粒子 / マイクロ波合成 / 水素発生触媒 / ギ酸 / チタニア / 光照射効果 |
研究実績の概要 |
複数の金属からなる多元系金属ナノ微粒子は単一の成分からなる一元系金属ナノ微粒子とは異なる化学的、物理的、光学的、電気的特性を示すことから、その合成法の開発と応用に関する研究が活発に行われている。本研究では世界に先駆けて新規三元系コア・シェル微結晶をサイズ・形状選択的に合成し、それを新規触媒材料として応用することを目的としている。本年度はギ酸分解による水素発生触媒のマイクロ波加熱による合成に関する以下の二つの研究を実施した。 (1)AgPd@Pd/TiO2触媒の合成と触媒活性に対する光照射効果 AgPd@Pd触媒の担体として使用しているTiO2は光触媒としての特性を有する。本年度はAgPd@Pd/TiO2触媒を合成し、触媒活性に与える紫外・可視光の照射効果を調べた。その結果、光照射下では室温でギ酸分解による水素発生に対する触媒活性が約50%向上することを見いだした。光照射によりTiO2表面に電子とホールが発生し、電子の一部がTiO2担体からPdシェル表面に移動することで触媒活性が向上したものと考えられる。 (2)Ag@Co@Pd/TiO2触媒の合成と触媒活性評価 AgコアとPdシェルから成るAg@Pd触媒は、触媒合成時にAgコア層とPdシェル層間で一部合金化し、AgPd合金ができると触媒活性が低下するという課題がある。Ag-Pd層間の合金化を抑制するために中間層にCo層を有するAg@Co@Pd三元系触媒を合成した。薄いCo層を有するAg@Co@Pd/TiO2触媒の合成には成功したが、ギ酸分解による水素発生触媒特性の著しい向上は観測されなかった。これによりAg-Pd相関は多少相互に合金化しても直接界面で接触させる方が活性の維持に有効なことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はAgPd@Pd/TiO2, Ag@Co@Pd/TiO2触媒の合成とギ酸分解による水素発生触媒としての応用に関する研究を実施した。結果の一部を英国化学会の国際誌 J. Mater. Chem. Aで発表した。AgPd@Pd/TiO2触媒については紫外・可視光照射の影響を調べた。その結果、室温、光照射下で触媒の活性が約50%向上することを世界に先駆けて見いだし、この研究成果を2016年春の応用物理学会で報告した。またAgPd@Pd/TiO2触媒の活性向上を目指してAg-Pd層間の合金化を抑制するためにAg-Pd層間にCo層を挿入したAg@Co@Pd/TiO2触媒を合成した。当初の目的通りにAg-Pd層間の合金化は抑制できたが、触媒活性はAgPd@Pd/TiO2と同程度であった。 上記のように本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はAgPd@Pd/TiO2触媒のTiO2微粒子の結晶型(アナターゼ、ルチル)や粒径との関係を明らかにする計画である。また光照射下、非照射下でのギ酸分解による水素発生触媒作用の温度依存性を調べ、反応の活性化エネルギーを求める計画である。最後に四年間の本研究で得られた結果を総括し、三元型コア・シェル型金属ナノ微結晶の結晶成長機構を原子レベルで解明するとともに、マイクロ波加熱による液相金属ナノ微粒子合成法を次世代複合金属ナノ材料の合成と応用の分野での新手法として確立するために不可欠な課題を明らかにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
過去3年間にマイクロ波加熱やオイルバス加熱を用いて三元系コア・シェル金属ナノ微結晶の創製と触媒応用に関する研究を精力的に展開し、多くの先駆的業績を挙げることができた。本補助事業の目的をより精緻に達成するために、これまで得られた研究成果を基に、新規三元系金属ナノ微粒子の合成と触媒応用に関する追加研究を実施すると共に学会参加や論文投稿などを実施する。
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次年度使用額の使用計画 |
新規三元系コア・シェル金属ナノ微粒子の合成と触媒応用に関する研究に必要な試薬や硝子器具などの購入代金、それに本実験の補佐を行うテクニカルスタッフの雇用費として主に使用する計画である。
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備考 |
コア・シェル型金属ナノ微粒子の合成と触媒応用に関する情報を上記URLに掲載している。
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