研究課題
カーボンナノチューブのコヒーレントフォノン分光の研究に関して次の成果を得た。また今までの研究成果を広く一般向けに解説した単著の本「フラーレン・ナノチューブ・グラフェンの科学」を共立出版から出版した。(1)(6,5)ナノチューブだけを集めた試料のコヒーレントフォノン分光の実験が可能になり、今まで強度が弱くて観測できなかった、微弱なスペクトルの同定がすべてできるようになった。計算によってフォノンの同定を行った。この成果はNano Letters に発表した。(2) ナノチューブの近接場分光の励起子と光子の相互作用を記述するプログラムを開発し、現在チップ増強ラマン分光のスペクトルを計算するプログラムを開発中である。(3) 欠陥に起因する弾性散乱の行列を計算するプログラムを開発した。その成果のテストとしてグラフェンのDバンドを説明する論文を Phys. Rev. B.に発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的である、プログラム開発と実験との共同研究は順調に消化している。近接場分光の実験が国内外でまだ大きく進展していないので、今後理論が先行して盛り上げていきたい。またコヒーレントフォノン分光では、入射レーザーパルスのパルス幅が大幅に小さくなり、10fsを下回る実験もできてきた。その結果、新たな理論が必要な実験結果も出てきているので、今後の進展に大きな期待が持てる。研究が、ナノチューブとグラフェンの両方の物質に共通な部分が増えてきたので、本課題の役割を明確にして研究を進めたい。ナノチューブデバイスの開発も進んでいるので、今後はこの分野に理論的に参入していきたい。
(1)近接場分光スペクトルの計算プログラムを完成させて実験結果と比較できるようにしたい。(2)電子ラマン分光の実験の進展に合わせて、実験グループとタイアップした研究を進める。(3)スクイーズド状態(2つのフォノンがコヒーレントに絡み合った状態)が実験で実現している可能性があり、この辺の理論的な側面を検討したい。(4)有限長ナノチューブの量子ドット状態における縮重度の問題について、さらに研究を進めたいと考えている。
2015年6月末に名古屋でナノチューブに国際会議があり、今までの成果を発表するために大学院生などを数名発表してもらうことになっている。これにかかる旅費、参加登録費を確保するために基金分を用意した。また、今年度は博士研究員を雇用する予定であり、そのための基金を用意した。研究室内のサーバーをつなぐ光ネットワーク網が2015年に設置12年になり、すべて新しい高速のネットワークに変える計画をするために基金を用意した。
(1)国際会議旅費、参加登録費 (学生3人分、45万円 1週間 名古屋)(2)博士研究員人件費(2か月分 80万円)(3)研究室内ネットワーク整備(80万円)(4)国際会議旅費 (1人分、1週間、30万円、米国)(5)計算機サーバー更新(40万円)を予定している。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Nano Lett.
巻: 14 ページ: 1426-1432
10.1021/nl404536b
Phys. Rev. B
巻: 90 ページ: 245140 -1-8
10.1103/PhysRevB.90.235410
10.1103/PhysRevB.90.245140
http://flex.phys.tohoku.ac.jp/japanese/