研究課題
本研究では,開放系量子ドット内においてナノプローブを導入し、走査ゲート顕微法(SGM)により量子マニピュレーションによって波動関数をアクティブコントロールすることで,新しい電子波デバイスを実現することを目的としている。これまでは半導体ヘテロ接合に形成された2次元電子層(2DEG)に形成された開放系量子ドットを用いてきたが,ダウンサイジングとSGM像の高解像度に向けて,平成26年度はよりグラフェンにおける開放系量子ドットの形成を視野に入れて並行して研究を進めてきた。さらに,平成27年度よりh-BNをグラフェン(Gr)の上下面に積層したBN/Gr/BN構造の作製に着手した。BNの積層方法としては幾つかの方法が提案されているが,コンタミネーションの問題が解消できるPPC/PDMSを使用したドライプロセスへと改良を行うことで,安定した4端子試料の作製技術の確立に成功した。これにより低温で100,000 cm2/Vs以上の移動度にまで向上させることができた。この試料での平均自由行程は約500 nmと見積もられ,開放系量子ドット一つの大きさに匹敵する程にまで達することができた。これにより,AlGaAs/GaAsヘテロ接合系2次元電子ガスと同様なシュブニコフ ド・ハース振動の観測ができるまでになった。この試料ではゲート電圧特性に対して伝導度ゆらぎも観測されており,その基礎特性の評価を進めた。一方で,AlGaAs/GaAsヘテロ接合における開放系量子ドットにおけるSGM観察に研究に関しては,高解像度化をめざしてチューニングフォークの利用ができるように装置の改良を行った。低温実験に関しては,作製した試料のトラブル等があって,今年度はあまり実験が進展できなかったが,新たな試料を作製して現在実験の準備を行っている。
3: やや遅れている
開放系量子ドットのダウンサイジングとSGM像の高解像度に向けて,グラフェンにおける開放系量子ドットの形成を視野に入れて,グラフェン試料の高移動度化に向けた研究を並行して進めてきた。h-BNをグラフェン(Gr)の上下面に積層したBN/Gr/BN構造の作製に着手し,PPC/PDMSを使用したドライプロセスを導入し,安定した4端子試料の作製技術の確立を図り,これにより低温で100,000 cm2/Vs以上の移動度にまで向上させることができた。この試料での平均自由行程は約500 nmと見積もられ,開放系量子ドット一つの大きさに匹敵する程にまで達することができた。これにより,AlGaAs/GaAsヘテロ接合系2次元電子ガスと同様なシュブニコフ ド・ハース振動の観測ができるようになっており,この試料の基礎特性の評価を行った。一方で,AlGaAs/GaAsヘテロ接合における開放系量子ドットにおけるSGM観察に研究に関しては,高解像度化をめざしてチューニングフォークの利用ができるように装置の改良を行った。低温実験に関しては,作製した試料のトラブル等があって,今年度はあまり実験が進展できなかったが,新たな試料を作製して現在実験の準備を行っている。
昨年度に確立したチューニングフォーク型AFMを使用して,2重結合開放系量子ドットのSGM観察を進める。より高度なスイッチング効果が期待される2重結合から4重型開放系量子ドットにおける波動関数の操作を行う。2つのドット間を往来する閉じられた電子軌道に加え,更に2つのドットを結合することで,一つの量子ドットの変調に対する影響が他の量子ドット内の電子密度分布へと波及する効果を検証し,リモートコントロールの基礎的データを収集する。AFM探針のポテンシャルの導入によるレギュラー系/カオス系への遷移や,このような閉鎖軌道を利用した量子演算素子(キュービット)への応用も含めて検討する。グラフェン(Gr)を絶縁体の六方晶窒化ホウ素(h-BN)で挟んだBN-Gr-BN積層構造ではバリスティック伝導状態が実現されており,それにより探針-伝導層距離の縮小,更に結合量子ドットの形状の縮小させることが期待される。昨年度に確立した高移動度BN/Gr/BN積層構造では,500nm程度の平均自由行程が実現されている。これを用いた開放系量子ドットを作製し,それによって初めて検証されるディラック電子系と2次元フェルミ電子ガス系との量子伝導現象の違いについて検証を進める。
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