研究課題/領域番号 |
25286007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高原 淳一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズモニクス / 量子ドット / プラズモニック導波路 / 長距離伝搬表面プラズモン |
研究実績の概要 |
昨年度までにコロイダル量子ドット(Colloidal Quantum Dot: CQD)をプラズモニック導波路(plasmonic waveguide: PWG)上に積層配置したCQD-PWG結合系を実現した。これを光励起することによりPWGに表面プラズモン・ポラリトン(Surface Plasmon Polariton: SPP)が励起、伝搬することを確認し、SPP光源の実現に成功している。本年度はこれをさらに発展させ、CQD-PWG結合系を用いた光機能(増幅や変調)の実現を目指して研究を行った。このため対物レンズ下での微細デバイスの安定した観測のために、生物顕微鏡を備品として導入した。 はじめに対称型金属スラブ導波路(アルミナ/銀/アルミナの三層構造)上に利得媒質としてCQDを置いた系において、理論計算より銀界面とCQD間のエネルギー移動を計算し、アルミナ層厚の最適距離を20nmと決定した。次にこの導波路を実際に作製した。対称型金属スラブ導波路には低損失の長距離伝搬モード(Long-Range Surface Plasmon: LRSP)が存在する。CQDをクラッド層にもつ対称型金属スラブ導波路におけるLRSPの伝搬特性を計測した。CQDに対する励起光(532nm)照射の有無におけるLRSP信号光(633nm)の伝搬損失を計測した。その結果、励起光の照射下でのみ損失の低減を観測し、CQDの利得媒質としての特性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
利得媒質としてCQDを用いた対称型金属スラブ導波路において、利得媒質によるLRSPの伝搬損失の低減を確認できたものの、増幅効果の観測までは至っていない。したがって、研究の目的に記載した計画と比較してやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで対称型金属スラブ導波路をベースとして、LRSPを利用したプラズモン回路の高機能化を目指して研究を行ってきた。しかし、LRSPは長い伝搬距離をもつものの、閉じ込めが弱くナノ光集積回路に必要とされる2次元(面内)方向の曲がりや分岐の実現が困難であることも明らかになった。そこで今後は、スラブ型と比較して強い閉じ込め効果をもつ金属スロット型導波路をベースとしたギャップ表面プラズモン(Gap Surface Plasmon: GSP)や3次元(縦)方向の曲がり導波路の研究を行う。目標の一つである変調機能の実現については、CQDのみに頼る従来計画を変更し、ナノメカニクス技術を導入してプラズモン共振器を電気的に駆動させることによりGSPの動的な変調を目指す。これによりアクティブ・プラズモニクスの実現を目指す。詳細は以下の通り。 1.金属スロット型導波路のGSP 機能性導波路のための準備として、スロット型プラズモニック導波路をアレイ化することにより、伝送距離の大幅な改善を目指す。また、アレイ化により曲がりや分岐などの集積化に必要となる構造を実現する。さらに、3次元(縦)方向の曲がり導波路の研究を行う。 2.プラズモン共振器の電気的制御 プラズモン共振器(金属ナノ構造を利用した光共振器)を用いた電気的制御を検討する。プラズモン共振器は超小型・超低消費エネルギーのナノレーザやナノ受光器を実現する基本エレメントとして有望である。しかし、これまで共振特性を電気的かつ動的に制御することが集積光素子を実現する上で大きな課題であった。そこで、極低電力動作が可能なナノメカニクスを共振器構造に応用することで、プラズモン共振器の電気的制御の実現を目指す。ナノメカニクスによるギャップサイズ変化を利用することで、共振器特性の電気的制御を実現する。さらに本共振器を応用したナノ光機能素子の実証も行う予定である。
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