光アンテナは光エネルギーの捕獲や蛍光体の輻射制御、ナノ空間への光エネルギーの集束などナノフォトニクスの機能を実現する基本素子として研究されてきた。しかし、これまで光アンテナはサイズの固定されたプラズモン共振器(金属ナノ構造を利用した光共振器)を用いて実現されており、その共振特性を動的に制御することは困難であった。そこで、本研究ではナノメカニクス(NEMS)の技術を用いてプラズモン共振器のギャップ間距離を制御することで、ギャップ表面プラズモン(Gap Surface Plasmon: GSP)の共振特性を可変とした。これにより光アンテナの共振特性を電気的に制御することに成功した。 はじめにpick-and-place法とよばれる手法で薄膜から切り出した金属ナノワイヤーを移動、固定して金属基板上の中空に担持し、250nmの初期ギャップ間距離を持つ金属・空気・金属構造を作製した。これに電圧を印加することで、ナノワイヤーを変形させ、金属間距離を数nmのオーダーまで近接できる。これによりGSPの共振波長を変えることに成功した。さらに昨年度までの成果を生かしてコロイダル量子ドット(Colloidal Quantum Dot: CQD)を金属基板上に積層配置し、ギャップ間に配置した。ギャップ間距離を変えながらCQDからの発光を観測し、印加電圧による発光スペクトルの制御を実現した。 本研究はプラズモニクスの分野においてCQDとNEMSという異なる分野を融合することで、プラズモニック共振特性の電気的制御を実現したといえる。本デバイスは電圧駆動素子であり、極低電力動作が可能である。これによりNEMSをベースとした超低消費電力アクティブ・プラズモニクスを実現することができる。
|